2024年04月12日
「そ……そうかっ!よくやった!それでお嬢ちゃんは?」
「そ……そうかっ!よくやった!それでお嬢ちゃんは?」
「あっちの部屋に。」
それ聞いた坂本はすぐに二人の居る部屋の障子を開いた。
「西郷さん,すまんがちと桂さんと話をさせてくれ。」
「構わん。」
坂本は西郷の返答を聞くと桂の腕を引っ張り部屋を飛び出した。
「坂本さんどこへ?」
こんなにぐいぐいと腕を引っ張り何処へ連れて行こうと言うのだ。坂本はいいからいいからと桂を連れて女中が案内するその後ろを歩いた。
「こちらです。」
女中はそう言うとぺこりと頭を下げてその場を去った。
坂本は咳払いをしてから中岡と顔を見合わせて頷きあった。https://blog.udn.com/a440edbd/180461947 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/180461980 https://mathew.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E4%B8%89%E6%B4%A5%E3%81%A8%E6%96%87%E3%81%AF%E3%83%95%E3%82%B5%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%9D%E3%82%93%E3%81%AA%E5%AD%90
「ここで頭冷やしてくれ。」
そう言って坂本は障子を開いた。
一体何を言ってるのだと思いながら桂は開かれた障子のその先を見て絶句した。
客間と思われるその部屋で遠慮がち正座をし,少し緊張したような,困惑したような表情でこちらを見ているその姿。
「ご無沙汰しております。」
気まずそうに伏し目がちで先に口を開いた。
「三……津……?どうして……。」
呆然と立ち尽くす桂の背中を坂本がそっと押して中へ踏み込ませた。
三津は答えることなく今にも泣きそうな顔で桂を見上げていた。
「来てくれてんだね……私の想い受け取ってくれたんだね?」
桂が一歩,二歩と三津の方へ踏み出した。
「想い?」
三津は何の事だときょとんとした目を向けて小首を傾げた。
その表情を見た桂は悲しげに顔を歪ませて何でもないと首を横に振った。
「小五郎さん,こちらに。」
三津は正面に座るように促した。桂は吸い寄せられるように三津の前に腰を下ろした。
「小五郎さん,話が進んでいないとはどういう事でしょうか?確かに……面と向かうには辛い相手かもしれません。でも吉田さんや兄上の想いはどうなるのですか?
今の今まで犠牲を払ってきたみんなはどうなるのですか?」
やはり桂に面と向かって物申せるのは三津だなと坂本はその場に立ったまんま二人を見ていた。
桂がだんまりだから三津は顔を顰めて話を続けた。
「小五郎さん……。私は貴方が創る新しい世を生きたいです。吉田さんと兄上の分も……。
その先を創れるのも,長州を守れるのも小五郎さんなんです。
変な意地張らないで!私みたいにならないで……。」
三津は桂ににじり寄って堅く握られた拳に手を重ねた。
「三津……。」
「私みたいにならないで……。」
三津はぽろぽろ涙を溢してお願いお願いと繰り返した。
桂は恐る恐るその体を抱き締めた。自分から抱きしめておきながら困惑した。
知らない着物を着て,以前とは違う香りのする三津に戸惑った。
「小五郎さん,一切何の連絡も寄越さなかった上にいきなり現れてこんな事言うのは無礼だと分かっています……。でも長州を守れるのは小五郎さんだけなんです。みんなの想いを無駄にしないで……。」
三津は真っ直ぐな目で桂を見上げて懇願した。
一時の意地なんて馬鹿げたものだ。ずっと後悔するぐらいなら何も考えず素直な方がよっぽどいい。
桂はぐっと唇を噛み締めた。何も分からない奴に政に口出しされるのは腹立たしい。だけど今はそれよりも虚しさが勝った。自分は一体何と張り合っているのだろう。
『玄瑞や稔麿の想いは忘れてなんかいないよ。』
むしろ二人を含む多くの同志を失った要因でもある相手だからこそ手を組むのに抵抗があるんだ。
でもそれを拒めば更に多くの犠牲を生む。
『姿を消して一切音沙汰の無かった三津が危険な京にまで足を運び私と向き合ってくれた……。ならば私も己の使命と向き合わねば。』
最愛の人が好きだと言ってくれた自分の生まれた郷を守らねば。最愛の人が大切にするものを守らねば。
「三津,わざわざありがとう。必ず長州を……託された想いを繋ぐから,見てて欲しい。この先を。」
「あっちの部屋に。」
それ聞いた坂本はすぐに二人の居る部屋の障子を開いた。
「西郷さん,すまんがちと桂さんと話をさせてくれ。」
「構わん。」
坂本は西郷の返答を聞くと桂の腕を引っ張り部屋を飛び出した。
「坂本さんどこへ?」
こんなにぐいぐいと腕を引っ張り何処へ連れて行こうと言うのだ。坂本はいいからいいからと桂を連れて女中が案内するその後ろを歩いた。
「こちらです。」
女中はそう言うとぺこりと頭を下げてその場を去った。
坂本は咳払いをしてから中岡と顔を見合わせて頷きあった。https://blog.udn.com/a440edbd/180461947 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/180461980 https://mathew.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E4%B8%89%E6%B4%A5%E3%81%A8%E6%96%87%E3%81%AF%E3%83%95%E3%82%B5%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%9D%E3%82%93%E3%81%AA%E5%AD%90
「ここで頭冷やしてくれ。」
そう言って坂本は障子を開いた。
一体何を言ってるのだと思いながら桂は開かれた障子のその先を見て絶句した。
客間と思われるその部屋で遠慮がち正座をし,少し緊張したような,困惑したような表情でこちらを見ているその姿。
「ご無沙汰しております。」
気まずそうに伏し目がちで先に口を開いた。
「三……津……?どうして……。」
呆然と立ち尽くす桂の背中を坂本がそっと押して中へ踏み込ませた。
三津は答えることなく今にも泣きそうな顔で桂を見上げていた。
「来てくれてんだね……私の想い受け取ってくれたんだね?」
桂が一歩,二歩と三津の方へ踏み出した。
「想い?」
三津は何の事だときょとんとした目を向けて小首を傾げた。
その表情を見た桂は悲しげに顔を歪ませて何でもないと首を横に振った。
「小五郎さん,こちらに。」
三津は正面に座るように促した。桂は吸い寄せられるように三津の前に腰を下ろした。
「小五郎さん,話が進んでいないとはどういう事でしょうか?確かに……面と向かうには辛い相手かもしれません。でも吉田さんや兄上の想いはどうなるのですか?
今の今まで犠牲を払ってきたみんなはどうなるのですか?」
やはり桂に面と向かって物申せるのは三津だなと坂本はその場に立ったまんま二人を見ていた。
桂がだんまりだから三津は顔を顰めて話を続けた。
「小五郎さん……。私は貴方が創る新しい世を生きたいです。吉田さんと兄上の分も……。
その先を創れるのも,長州を守れるのも小五郎さんなんです。
変な意地張らないで!私みたいにならないで……。」
三津は桂ににじり寄って堅く握られた拳に手を重ねた。
「三津……。」
「私みたいにならないで……。」
三津はぽろぽろ涙を溢してお願いお願いと繰り返した。
桂は恐る恐るその体を抱き締めた。自分から抱きしめておきながら困惑した。
知らない着物を着て,以前とは違う香りのする三津に戸惑った。
「小五郎さん,一切何の連絡も寄越さなかった上にいきなり現れてこんな事言うのは無礼だと分かっています……。でも長州を守れるのは小五郎さんだけなんです。みんなの想いを無駄にしないで……。」
三津は真っ直ぐな目で桂を見上げて懇願した。
一時の意地なんて馬鹿げたものだ。ずっと後悔するぐらいなら何も考えず素直な方がよっぽどいい。
桂はぐっと唇を噛み締めた。何も分からない奴に政に口出しされるのは腹立たしい。だけど今はそれよりも虚しさが勝った。自分は一体何と張り合っているのだろう。
『玄瑞や稔麿の想いは忘れてなんかいないよ。』
むしろ二人を含む多くの同志を失った要因でもある相手だからこそ手を組むのに抵抗があるんだ。
でもそれを拒めば更に多くの犠牲を生む。
『姿を消して一切音沙汰の無かった三津が危険な京にまで足を運び私と向き合ってくれた……。ならば私も己の使命と向き合わねば。』
最愛の人が好きだと言ってくれた自分の生まれた郷を守らねば。最愛の人が大切にするものを守らねば。
「三津,わざわざありがとう。必ず長州を……託された想いを繋ぐから,見てて欲しい。この先を。」
Posted by beckywong at 01:01│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
|
|
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。