2024年04月30日
「アカン,私より長生きして。」
「アカン,私より長生きして。」
「言われんでも俺は死ぬ気せんわ。」
自信満々な山縣に安堵した三津は目を細めて穏やかに笑った。それから分かり合えたしるしに呑みましょうと互いに酒を注ぎあった。
その酒を一気に飲み干した三津はとろんとした目で山縣を見つめた。
「何や誘っとるんか。」
冗談半分に片口を上げる山縣の顔から視線を落として,三津は山縣の太腿を擦った。
「えっちょっ!何!?」 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/04/28/050740?_gl=1*rkeofe*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12582545 https://lefuz.pixnet.net/blog/post/148107454
まさか本当にその気なのか?酒の勢いでそんな事を?と狼狽えている山縣の太腿に三津は頭を乗せた。猫が丸まって寝るように,身を縮めて寝転んだ。
そしてすぐに寝息を立て始めた。いきなり膝枕をされた事に唖然とした。それにこんなとこで寝たら風邪引くだろうと思ったが起こす気はなった。距離を保っていた三津がすり寄って来たのが嬉しかった。
「赤禰,この役割俺が引き継いでもええんやろか。」
ごく当たり前のように眠る顔を見つめながら呟いた。赤禰はいい思いしてたんだなぁとしみじみ思った。
「出来たらそんな役割は廃止したいとこだけどねぇ。」
嫉妬に満ちた声に山縣の体は硬直した。姿は視界に入っていないが,その声の主が冷たい目でこっちを見ているのが分かる。多分口元は笑みを浮かべている。
「まぁまぁ木戸さん。今日だけやろうから許しちゃり。ど阿呆とか罵られとるんやけぇこれぐらいの褒美は……。」
喉を鳴らしているのが高杉だと分かった瞬間,声のする方へ鋭く視線を向けた。そこには入江と伊藤もにやついた顔で立っていた。
揃いも揃って盗み聞きか。いつも自分がしてるのを棚に上げて不機嫌な顔をした。
「木戸さん,嫁ちゃんめっちゃ口悪くなっとるで。」
「うん,身を持って知っている。それに人の死には人一倍感情的なるからね。そこは変わらないと言うか,以前より鋭くなってるかもしれない。」
桂は二人の側に歩み寄って三津に半纏を掛けてやった。
「妻の暴言は私が謝るよ。申し訳無い。でもあんなに阿呆と罵るのは初めて見たよ。」
桂は三津の顔を覗き込んでふふっと笑った。
山縣は幾松に散々罵られてきたから阿呆と言う言葉には何とも思わなくなっていた。だがそれを三津が言うのはまた別の話だ。
「大好きな赤禰を馬鹿にされたけぇ怒ったんやろな。」
言い返したい事は山程あったけど,三津が矢継ぎ早に言葉をぶつけてくるから反論の隙がなかったと呆れ顔で笑った。
「武人さんを馬鹿にされたからやないっちゃ。人が信念を持ってした事を馬鹿にするからや。
まぁお前が仲間意識が強くて,武人さんが離れてくのが寂しくて捻くれとったのはよう分かった。」
入江に茶化すように言われて山縣はふんと鼻を鳴らした。
「何で勝手に俺らの話聞いとるんよ。見せモンやないぞ。」
「そりゃ監視しとかないと人の妻に何かされても困るからね。それこそこの場で君の首を斬り落とさなばならんくなるし。」
桂は君だって死にたくないだろう?と小首を傾げた。冗談なのに冗談に聞こえなくて山縣の顔から血の気が引いた。
「それなら入江どうなるん!?」
山縣は必死にその矛先を変えようと試みた。桂と入江はきょとんとした顔を見合わせた。
「九一は仕方ない。三津が九一を好きなんだから。」三津は自分の三津だったのにおかしな事に略奪したのは私の方だと桂は苦笑した。
「どんなに固い絆で結ばれていても何かをきっかけに人の心は変わる。
三津の最愛の相手が私だったのも,もう過去の事になってしまった。」
三津を見つめる桂が余りにも悲壮感に満ちているから誰も何も言わずにいた。自業自得なのは本人が一番分かっているし,これ以上言うのも可哀想だからみんな黙っていた。
「言われんでも俺は死ぬ気せんわ。」
自信満々な山縣に安堵した三津は目を細めて穏やかに笑った。それから分かり合えたしるしに呑みましょうと互いに酒を注ぎあった。
その酒を一気に飲み干した三津はとろんとした目で山縣を見つめた。
「何や誘っとるんか。」
冗談半分に片口を上げる山縣の顔から視線を落として,三津は山縣の太腿を擦った。
「えっちょっ!何!?」 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/04/28/050740?_gl=1*rkeofe*_gcl_au*NjYyNTYyMDMxLjE3MDkwNDE3OTU. https://www.bloglovin.com/@freelancer10/12582545 https://lefuz.pixnet.net/blog/post/148107454
まさか本当にその気なのか?酒の勢いでそんな事を?と狼狽えている山縣の太腿に三津は頭を乗せた。猫が丸まって寝るように,身を縮めて寝転んだ。
そしてすぐに寝息を立て始めた。いきなり膝枕をされた事に唖然とした。それにこんなとこで寝たら風邪引くだろうと思ったが起こす気はなった。距離を保っていた三津がすり寄って来たのが嬉しかった。
「赤禰,この役割俺が引き継いでもええんやろか。」
ごく当たり前のように眠る顔を見つめながら呟いた。赤禰はいい思いしてたんだなぁとしみじみ思った。
「出来たらそんな役割は廃止したいとこだけどねぇ。」
嫉妬に満ちた声に山縣の体は硬直した。姿は視界に入っていないが,その声の主が冷たい目でこっちを見ているのが分かる。多分口元は笑みを浮かべている。
「まぁまぁ木戸さん。今日だけやろうから許しちゃり。ど阿呆とか罵られとるんやけぇこれぐらいの褒美は……。」
喉を鳴らしているのが高杉だと分かった瞬間,声のする方へ鋭く視線を向けた。そこには入江と伊藤もにやついた顔で立っていた。
揃いも揃って盗み聞きか。いつも自分がしてるのを棚に上げて不機嫌な顔をした。
「木戸さん,嫁ちゃんめっちゃ口悪くなっとるで。」
「うん,身を持って知っている。それに人の死には人一倍感情的なるからね。そこは変わらないと言うか,以前より鋭くなってるかもしれない。」
桂は二人の側に歩み寄って三津に半纏を掛けてやった。
「妻の暴言は私が謝るよ。申し訳無い。でもあんなに阿呆と罵るのは初めて見たよ。」
桂は三津の顔を覗き込んでふふっと笑った。
山縣は幾松に散々罵られてきたから阿呆と言う言葉には何とも思わなくなっていた。だがそれを三津が言うのはまた別の話だ。
「大好きな赤禰を馬鹿にされたけぇ怒ったんやろな。」
言い返したい事は山程あったけど,三津が矢継ぎ早に言葉をぶつけてくるから反論の隙がなかったと呆れ顔で笑った。
「武人さんを馬鹿にされたからやないっちゃ。人が信念を持ってした事を馬鹿にするからや。
まぁお前が仲間意識が強くて,武人さんが離れてくのが寂しくて捻くれとったのはよう分かった。」
入江に茶化すように言われて山縣はふんと鼻を鳴らした。
「何で勝手に俺らの話聞いとるんよ。見せモンやないぞ。」
「そりゃ監視しとかないと人の妻に何かされても困るからね。それこそこの場で君の首を斬り落とさなばならんくなるし。」
桂は君だって死にたくないだろう?と小首を傾げた。冗談なのに冗談に聞こえなくて山縣の顔から血の気が引いた。
「それなら入江どうなるん!?」
山縣は必死にその矛先を変えようと試みた。桂と入江はきょとんとした顔を見合わせた。
「九一は仕方ない。三津が九一を好きなんだから。」三津は自分の三津だったのにおかしな事に略奪したのは私の方だと桂は苦笑した。
「どんなに固い絆で結ばれていても何かをきっかけに人の心は変わる。
三津の最愛の相手が私だったのも,もう過去の事になってしまった。」
三津を見つめる桂が余りにも悲壮感に満ちているから誰も何も言わずにいた。自業自得なのは本人が一番分かっているし,これ以上言うのも可哀想だからみんな黙っていた。
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21:22
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2024年04月12日
「そ……そうかっ!よくやった!それでお嬢ちゃんは?」
「そ……そうかっ!よくやった!それでお嬢ちゃんは?」
「あっちの部屋に。」
それ聞いた坂本はすぐに二人の居る部屋の障子を開いた。
「西郷さん,すまんがちと桂さんと話をさせてくれ。」
「構わん。」
坂本は西郷の返答を聞くと桂の腕を引っ張り部屋を飛び出した。
「坂本さんどこへ?」
こんなにぐいぐいと腕を引っ張り何処へ連れて行こうと言うのだ。坂本はいいからいいからと桂を連れて女中が案内するその後ろを歩いた。
「こちらです。」
女中はそう言うとぺこりと頭を下げてその場を去った。
坂本は咳払いをしてから中岡と顔を見合わせて頷きあった。https://blog.udn.com/a440edbd/180461947 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/180461980 https://mathew.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E4%B8%89%E6%B4%A5%E3%81%A8%E6%96%87%E3%81%AF%E3%83%95%E3%82%B5%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%9D%E3%82%93%E3%81%AA%E5%AD%90
「ここで頭冷やしてくれ。」
そう言って坂本は障子を開いた。
一体何を言ってるのだと思いながら桂は開かれた障子のその先を見て絶句した。
客間と思われるその部屋で遠慮がち正座をし,少し緊張したような,困惑したような表情でこちらを見ているその姿。
「ご無沙汰しております。」
気まずそうに伏し目がちで先に口を開いた。
「三……津……?どうして……。」
呆然と立ち尽くす桂の背中を坂本がそっと押して中へ踏み込ませた。
三津は答えることなく今にも泣きそうな顔で桂を見上げていた。
「来てくれてんだね……私の想い受け取ってくれたんだね?」
桂が一歩,二歩と三津の方へ踏み出した。
「想い?」
三津は何の事だときょとんとした目を向けて小首を傾げた。
その表情を見た桂は悲しげに顔を歪ませて何でもないと首を横に振った。
「小五郎さん,こちらに。」
三津は正面に座るように促した。桂は吸い寄せられるように三津の前に腰を下ろした。
「小五郎さん,話が進んでいないとはどういう事でしょうか?確かに……面と向かうには辛い相手かもしれません。でも吉田さんや兄上の想いはどうなるのですか?
今の今まで犠牲を払ってきたみんなはどうなるのですか?」
やはり桂に面と向かって物申せるのは三津だなと坂本はその場に立ったまんま二人を見ていた。
桂がだんまりだから三津は顔を顰めて話を続けた。
「小五郎さん……。私は貴方が創る新しい世を生きたいです。吉田さんと兄上の分も……。
その先を創れるのも,長州を守れるのも小五郎さんなんです。
変な意地張らないで!私みたいにならないで……。」
三津は桂ににじり寄って堅く握られた拳に手を重ねた。
「三津……。」
「私みたいにならないで……。」
三津はぽろぽろ涙を溢してお願いお願いと繰り返した。
桂は恐る恐るその体を抱き締めた。自分から抱きしめておきながら困惑した。
知らない着物を着て,以前とは違う香りのする三津に戸惑った。
「小五郎さん,一切何の連絡も寄越さなかった上にいきなり現れてこんな事言うのは無礼だと分かっています……。でも長州を守れるのは小五郎さんだけなんです。みんなの想いを無駄にしないで……。」
三津は真っ直ぐな目で桂を見上げて懇願した。
一時の意地なんて馬鹿げたものだ。ずっと後悔するぐらいなら何も考えず素直な方がよっぽどいい。
桂はぐっと唇を噛み締めた。何も分からない奴に政に口出しされるのは腹立たしい。だけど今はそれよりも虚しさが勝った。自分は一体何と張り合っているのだろう。
『玄瑞や稔麿の想いは忘れてなんかいないよ。』
むしろ二人を含む多くの同志を失った要因でもある相手だからこそ手を組むのに抵抗があるんだ。
でもそれを拒めば更に多くの犠牲を生む。
『姿を消して一切音沙汰の無かった三津が危険な京にまで足を運び私と向き合ってくれた……。ならば私も己の使命と向き合わねば。』
最愛の人が好きだと言ってくれた自分の生まれた郷を守らねば。最愛の人が大切にするものを守らねば。
「三津,わざわざありがとう。必ず長州を……託された想いを繋ぐから,見てて欲しい。この先を。」
「あっちの部屋に。」
それ聞いた坂本はすぐに二人の居る部屋の障子を開いた。
「西郷さん,すまんがちと桂さんと話をさせてくれ。」
「構わん。」
坂本は西郷の返答を聞くと桂の腕を引っ張り部屋を飛び出した。
「坂本さんどこへ?」
こんなにぐいぐいと腕を引っ張り何処へ連れて行こうと言うのだ。坂本はいいからいいからと桂を連れて女中が案内するその後ろを歩いた。
「こちらです。」
女中はそう言うとぺこりと頭を下げてその場を去った。
坂本は咳払いをしてから中岡と顔を見合わせて頷きあった。https://blog.udn.com/a440edbd/180461947 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/180461980 https://mathew.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E4%B8%89%E6%B4%A5%E3%81%A8%E6%96%87%E3%81%AF%E3%83%95%E3%82%B5%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%9D%E3%82%93%E3%81%AA%E5%AD%90
「ここで頭冷やしてくれ。」
そう言って坂本は障子を開いた。
一体何を言ってるのだと思いながら桂は開かれた障子のその先を見て絶句した。
客間と思われるその部屋で遠慮がち正座をし,少し緊張したような,困惑したような表情でこちらを見ているその姿。
「ご無沙汰しております。」
気まずそうに伏し目がちで先に口を開いた。
「三……津……?どうして……。」
呆然と立ち尽くす桂の背中を坂本がそっと押して中へ踏み込ませた。
三津は答えることなく今にも泣きそうな顔で桂を見上げていた。
「来てくれてんだね……私の想い受け取ってくれたんだね?」
桂が一歩,二歩と三津の方へ踏み出した。
「想い?」
三津は何の事だときょとんとした目を向けて小首を傾げた。
その表情を見た桂は悲しげに顔を歪ませて何でもないと首を横に振った。
「小五郎さん,こちらに。」
三津は正面に座るように促した。桂は吸い寄せられるように三津の前に腰を下ろした。
「小五郎さん,話が進んでいないとはどういう事でしょうか?確かに……面と向かうには辛い相手かもしれません。でも吉田さんや兄上の想いはどうなるのですか?
今の今まで犠牲を払ってきたみんなはどうなるのですか?」
やはり桂に面と向かって物申せるのは三津だなと坂本はその場に立ったまんま二人を見ていた。
桂がだんまりだから三津は顔を顰めて話を続けた。
「小五郎さん……。私は貴方が創る新しい世を生きたいです。吉田さんと兄上の分も……。
その先を創れるのも,長州を守れるのも小五郎さんなんです。
変な意地張らないで!私みたいにならないで……。」
三津は桂ににじり寄って堅く握られた拳に手を重ねた。
「三津……。」
「私みたいにならないで……。」
三津はぽろぽろ涙を溢してお願いお願いと繰り返した。
桂は恐る恐るその体を抱き締めた。自分から抱きしめておきながら困惑した。
知らない着物を着て,以前とは違う香りのする三津に戸惑った。
「小五郎さん,一切何の連絡も寄越さなかった上にいきなり現れてこんな事言うのは無礼だと分かっています……。でも長州を守れるのは小五郎さんだけなんです。みんなの想いを無駄にしないで……。」
三津は真っ直ぐな目で桂を見上げて懇願した。
一時の意地なんて馬鹿げたものだ。ずっと後悔するぐらいなら何も考えず素直な方がよっぽどいい。
桂はぐっと唇を噛み締めた。何も分からない奴に政に口出しされるのは腹立たしい。だけど今はそれよりも虚しさが勝った。自分は一体何と張り合っているのだろう。
『玄瑞や稔麿の想いは忘れてなんかいないよ。』
むしろ二人を含む多くの同志を失った要因でもある相手だからこそ手を組むのに抵抗があるんだ。
でもそれを拒めば更に多くの犠牲を生む。
『姿を消して一切音沙汰の無かった三津が危険な京にまで足を運び私と向き合ってくれた……。ならば私も己の使命と向き合わねば。』
最愛の人が好きだと言ってくれた自分の生まれた郷を守らねば。最愛の人が大切にするものを守らねば。
「三津,わざわざありがとう。必ず長州を……託された想いを繋ぐから,見てて欲しい。この先を。」
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2024年04月12日
一之助の申し出に三津は口を半開きでぽかんとした。
一之助の申し出に三津は口を半開きでぽかんとした。
「俺とじゃ嫌か。」
「いえ!一之助さんに誘ってもらえると思わんくて……。あっ文さんに年末年始どうしはるか聞いときます!」
今から楽しみとにこにこする三津を前に,誘った自分への驚きが隠せなかった。誘っといて何だが二人きりで行くのだろうかと疑問に思った。
その日仕事を終えて家に戻った三津は,夕餉を食べながら文に初詣の話をした。
「へぇ。一之助さんと初詣。いいやん二人で行っておいで。」
「えっ二人なんですか?」 https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/cd3f9a7c860 https://johnsmith786.livedoor.blog/archives/2531199.html https://community.joomla.org/events/my-events/er-renno-shiyake-motchokantoiken.html
「二人やないの?一之助さんそのつもりで誘ってきたんやないそ?うちは母と妹達と行くけ二人で行っておいでよ。」
これは入江に報告案件だと口角を上げた。心の中でいい話題提供ありがとうと一之助に感謝した。
萩から戻った入江は口角が上がりっぱなしだった。一日半とは言え,久方ぶりに三津と過ごした時間を思い出せば嫌でもにやける。
訓練の時以外はずっとにやにやしている。夕餉を食べる今も嬉しそうな顔をしている。
「鼻歌まで歌って。」
隣りで赤禰がその幸せを分けてくれとぼやいた。ついて行きたかったのにそれを却下した高杉を横目で睨んだ。
「なぁ九一抱いたんか?」
高杉の単刀直入な質問にご機嫌だった入江は心底嫌そうな顔を向けた。
「抱いとらん。」
「は!?何でや。嘘やろ?何しに行ったん?」
高杉と山縣は何の為の暇だと食ってかかった。こっちはその土産話を楽しみに待ってたんとぞと怒り始めた。
「会いに行っただけや。」
「嘘やろ。そんなに機嫌いい癖に何もない訳ないやろ。何や三津さん良すぎて言いたくないんか?俺らに教えたくないそう言う事か!?」
「でかい声でそんなん言うな。それでも私は有意義な時間を過ごしたそ。」
どんなに不機嫌になってもそれを思い出せば顔はにやける。
『明日には文を出さんと。』
「随分とご機嫌だな。」
落ち着き払った低い声に入江は箸を止めて顔を上げた。
「そりゃ生きてりゃ機嫌のいい日ぐらいありますよ。木戸さん。いつお戻りに?」
広間は一瞬にして静まり返った。その様子に随分と嫌われたもんだねと笑って入江の正面に腰を下ろした。
「何か報告か?」
さっきの会話を聞かれてたのかと冷や冷やしながら高杉は平静を装って口を挟んだ。
「あぁ。西郷との会合の日取りが決まった。年明けに京の小松帯刀邸だ。」
気が重いと深い溜息をついた。
「三津が居てくれたら……。」
そればかりがずっと頭の中を巡っている。「木戸さん,三津はもう一月以上音沙汰無しです。現実を受け入れたらどうですか?気晴らしに女でも買ったらいい。」
桂は淡々と言い放つ入江を睨みつけた。
「三津以外に触れる気は一切ない。同じ過ちを繰り返すつもりはない。」
「もう遅いですけどね。三津は居ないんですから。」
入江はご馳走様と手を合わせて広間を出た。これ以上桂と話すことはない。
桂は両手で顔を覆って大きな溜息をついた。
「三津は文ちゃんのところに居るんだね?無事なんだね?それだけ分かればもういい……。」
だから安心させてくれと高杉に懇願した。絞り出すような声で頼むと言われて高杉と赤禰は顔を見合わせた。
「木戸さん,それは自分で確かめんといけん。今はそんな場合やないのは分かっちょるけど……。
俺から言えるのは……便りがないのは元気な証拠……とでも思っといたらいいと思う。」
高杉からの言葉に桂はそうかとうっすら笑みを浮かべた。
「俺とじゃ嫌か。」
「いえ!一之助さんに誘ってもらえると思わんくて……。あっ文さんに年末年始どうしはるか聞いときます!」
今から楽しみとにこにこする三津を前に,誘った自分への驚きが隠せなかった。誘っといて何だが二人きりで行くのだろうかと疑問に思った。
その日仕事を終えて家に戻った三津は,夕餉を食べながら文に初詣の話をした。
「へぇ。一之助さんと初詣。いいやん二人で行っておいで。」
「えっ二人なんですか?」 https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/cd3f9a7c860 https://johnsmith786.livedoor.blog/archives/2531199.html https://community.joomla.org/events/my-events/er-renno-shiyake-motchokantoiken.html
「二人やないの?一之助さんそのつもりで誘ってきたんやないそ?うちは母と妹達と行くけ二人で行っておいでよ。」
これは入江に報告案件だと口角を上げた。心の中でいい話題提供ありがとうと一之助に感謝した。
萩から戻った入江は口角が上がりっぱなしだった。一日半とは言え,久方ぶりに三津と過ごした時間を思い出せば嫌でもにやける。
訓練の時以外はずっとにやにやしている。夕餉を食べる今も嬉しそうな顔をしている。
「鼻歌まで歌って。」
隣りで赤禰がその幸せを分けてくれとぼやいた。ついて行きたかったのにそれを却下した高杉を横目で睨んだ。
「なぁ九一抱いたんか?」
高杉の単刀直入な質問にご機嫌だった入江は心底嫌そうな顔を向けた。
「抱いとらん。」
「は!?何でや。嘘やろ?何しに行ったん?」
高杉と山縣は何の為の暇だと食ってかかった。こっちはその土産話を楽しみに待ってたんとぞと怒り始めた。
「会いに行っただけや。」
「嘘やろ。そんなに機嫌いい癖に何もない訳ないやろ。何や三津さん良すぎて言いたくないんか?俺らに教えたくないそう言う事か!?」
「でかい声でそんなん言うな。それでも私は有意義な時間を過ごしたそ。」
どんなに不機嫌になってもそれを思い出せば顔はにやける。
『明日には文を出さんと。』
「随分とご機嫌だな。」
落ち着き払った低い声に入江は箸を止めて顔を上げた。
「そりゃ生きてりゃ機嫌のいい日ぐらいありますよ。木戸さん。いつお戻りに?」
広間は一瞬にして静まり返った。その様子に随分と嫌われたもんだねと笑って入江の正面に腰を下ろした。
「何か報告か?」
さっきの会話を聞かれてたのかと冷や冷やしながら高杉は平静を装って口を挟んだ。
「あぁ。西郷との会合の日取りが決まった。年明けに京の小松帯刀邸だ。」
気が重いと深い溜息をついた。
「三津が居てくれたら……。」
そればかりがずっと頭の中を巡っている。「木戸さん,三津はもう一月以上音沙汰無しです。現実を受け入れたらどうですか?気晴らしに女でも買ったらいい。」
桂は淡々と言い放つ入江を睨みつけた。
「三津以外に触れる気は一切ない。同じ過ちを繰り返すつもりはない。」
「もう遅いですけどね。三津は居ないんですから。」
入江はご馳走様と手を合わせて広間を出た。これ以上桂と話すことはない。
桂は両手で顔を覆って大きな溜息をついた。
「三津は文ちゃんのところに居るんだね?無事なんだね?それだけ分かればもういい……。」
だから安心させてくれと高杉に懇願した。絞り出すような声で頼むと言われて高杉と赤禰は顔を見合わせた。
「木戸さん,それは自分で確かめんといけん。今はそんな場合やないのは分かっちょるけど……。
俺から言えるのは……便りがないのは元気な証拠……とでも思っといたらいいと思う。」
高杉からの言葉に桂はそうかとうっすら笑みを浮かべた。
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2024年04月12日
にっこりと微笑む顔が眩しかった。
にっこりと微笑む顔が眩しかった。みんなの目があったが気持ちを抑えきれなかった入江は最後に三津をきつく抱きしめた。
「必ず戻って来る。」
そう囁やけば三津は腕を背中に回して力を込めてそれに答えた。
色々と口を出したかった文とすみだがそこはぐっと堪えて二人の惜別を見届けた。
「すみ,母上に体を大事にと。」
「伝えとく。あと早よ孫の顔見せちゃりよ。」
「その言葉はお前にそのまま返す。じゃあまた。」 https://blog.udn.com/29339bfd/180455419 https://classic-blog.udn.com/29339bfd/180455428 https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/14/
ふんと鼻で笑って入江は馬を歩かせた。
「すみ,あの話考えとってや。私と梅子に出来る罪滅ぼしはそれぐらいやけぇ。」
伊藤はすみにそう告げて入江の後を追いかけた。
二人の背中を見送って,文はすみの方を向いた。
「あの話って何?」
「あいつと梅子さんが私に婿紹介してくれるって言っとるそ。あっ梅子さんは今のあいつの奥さんね。前話した孕んだ芸妓。」
すみはきょとんとしてる三津に説明した。離縁のきっかけになった相手と元夫から次の相手を紹介されるとはどんな状況だと三津は唖然とした。
でも考えれば桂にも幾松が居るのと似たような状況かと思えば何となく納得できた。
「まぁ会って話すぐらいはしたらいいんやない?
で……三津さんは入江さんと何があったん?」
急に話を振られて三津はギクッと肩を跳ねさせた。 「私がおることで三津を縛り付けて良い相手が現れたのに先に進めんってなるのが嫌なんよ。三津の先の幸せを奪うなんてしたくない。
でももし,私を忘れたくないって強く思ってくれるならこれからも毎日私の事を思い出して欲しい。
私も三津を想わない日は一日としてないと誓う。」
三津は何度も首を縦に振った。
「私も九一さんを忘れる日なんて絶対ないです。いつもどこかで想います。必ず。」
三津の真剣な眼差しに入江はふっと笑みを浮かべた。
きっと三津ならそう言うと思っていた。性格の悪さが出たなと自分でも思った。
縛り付けたくないと言いながら,これで自分だけを想うように仕向けた。
「次会う時までそのままの気持ちで私を想ってくれるなら今度こそ一緒になろう。」
すると三津は迷わず頷いた。もう先は約束されたようなもんだ。
三津を腕に抱いて明日が来るのが名残惜しいと思いながら眠りについた。
翌日,朝餉を食べ終えた後で三津は入江に持たせるおにぎりを作っていた。
伊藤の分もと言ったがあいつのは要らんと一蹴された。
二人で台所で最後の時間を楽しんでいるところに文とすみがやって来た。
「ちゃんと思い出作った?」
「作った作った。」
入江は余計なお世話だと文の問いに適当な返事をした。
「また何もせんかったん?」
文が半ば呆れ気味に入江と三津の顔を交互に見ると二人は無言で顔を見合わせた。
それから三津が耳まで赤く染めて目を伏せた。
「えっ何。何かはしたそ?」
「待って文ちゃん。愚兄の生々しい話は聞きたくない。気持ち悪い。」
興味津々に聞き出そうとする文をすみが止めた。
「そうよな。ごめんごめん。後で三津さんに聞くけぇ。」
文がにやりと視線を寄越すから三津はビクッと肩を揺らして今度は顔ごと逸した。
相変わらず表情が素直だとすみが微笑ましく思っていたがある事を思い出してその顔を歪めた。
「そうや,クソ男が迎えに来とるそ。」
すみが忌々しいと舌打ちをしながら胸の前で腕組みをした。
「女子がクソとか言うなや。どうせ俊輔にも暴言吐いたんやろ。」
「別に?萩の空気が汚れるからさっさと消えろって言っただけっちゃ。」
「はいはい,さっさと連れて帰るわ。三津,もう少し別れを惜しみたかったけどこう言われたら帰るしかないけぇもう行くわな。」
入江がすみに当てつけがましくそう告げると三津は眉を八の字にして物凄く寂しそうな顔で入江を見つめた。
「必ず戻って来る。」
そう囁やけば三津は腕を背中に回して力を込めてそれに答えた。
色々と口を出したかった文とすみだがそこはぐっと堪えて二人の惜別を見届けた。
「すみ,母上に体を大事にと。」
「伝えとく。あと早よ孫の顔見せちゃりよ。」
「その言葉はお前にそのまま返す。じゃあまた。」 https://blog.udn.com/29339bfd/180455419 https://classic-blog.udn.com/29339bfd/180455428 https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/14/
ふんと鼻で笑って入江は馬を歩かせた。
「すみ,あの話考えとってや。私と梅子に出来る罪滅ぼしはそれぐらいやけぇ。」
伊藤はすみにそう告げて入江の後を追いかけた。
二人の背中を見送って,文はすみの方を向いた。
「あの話って何?」
「あいつと梅子さんが私に婿紹介してくれるって言っとるそ。あっ梅子さんは今のあいつの奥さんね。前話した孕んだ芸妓。」
すみはきょとんとしてる三津に説明した。離縁のきっかけになった相手と元夫から次の相手を紹介されるとはどんな状況だと三津は唖然とした。
でも考えれば桂にも幾松が居るのと似たような状況かと思えば何となく納得できた。
「まぁ会って話すぐらいはしたらいいんやない?
で……三津さんは入江さんと何があったん?」
急に話を振られて三津はギクッと肩を跳ねさせた。 「私がおることで三津を縛り付けて良い相手が現れたのに先に進めんってなるのが嫌なんよ。三津の先の幸せを奪うなんてしたくない。
でももし,私を忘れたくないって強く思ってくれるならこれからも毎日私の事を思い出して欲しい。
私も三津を想わない日は一日としてないと誓う。」
三津は何度も首を縦に振った。
「私も九一さんを忘れる日なんて絶対ないです。いつもどこかで想います。必ず。」
三津の真剣な眼差しに入江はふっと笑みを浮かべた。
きっと三津ならそう言うと思っていた。性格の悪さが出たなと自分でも思った。
縛り付けたくないと言いながら,これで自分だけを想うように仕向けた。
「次会う時までそのままの気持ちで私を想ってくれるなら今度こそ一緒になろう。」
すると三津は迷わず頷いた。もう先は約束されたようなもんだ。
三津を腕に抱いて明日が来るのが名残惜しいと思いながら眠りについた。
翌日,朝餉を食べ終えた後で三津は入江に持たせるおにぎりを作っていた。
伊藤の分もと言ったがあいつのは要らんと一蹴された。
二人で台所で最後の時間を楽しんでいるところに文とすみがやって来た。
「ちゃんと思い出作った?」
「作った作った。」
入江は余計なお世話だと文の問いに適当な返事をした。
「また何もせんかったん?」
文が半ば呆れ気味に入江と三津の顔を交互に見ると二人は無言で顔を見合わせた。
それから三津が耳まで赤く染めて目を伏せた。
「えっ何。何かはしたそ?」
「待って文ちゃん。愚兄の生々しい話は聞きたくない。気持ち悪い。」
興味津々に聞き出そうとする文をすみが止めた。
「そうよな。ごめんごめん。後で三津さんに聞くけぇ。」
文がにやりと視線を寄越すから三津はビクッと肩を揺らして今度は顔ごと逸した。
相変わらず表情が素直だとすみが微笑ましく思っていたがある事を思い出してその顔を歪めた。
「そうや,クソ男が迎えに来とるそ。」
すみが忌々しいと舌打ちをしながら胸の前で腕組みをした。
「女子がクソとか言うなや。どうせ俊輔にも暴言吐いたんやろ。」
「別に?萩の空気が汚れるからさっさと消えろって言っただけっちゃ。」
「はいはい,さっさと連れて帰るわ。三津,もう少し別れを惜しみたかったけどこう言われたら帰るしかないけぇもう行くわな。」
入江がすみに当てつけがましくそう告げると三津は眉を八の字にして物凄く寂しそうな顔で入江を見つめた。
Posted by beckywong at
00:21
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