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2024年10月12日

報春院は彼の前に膝を折って

報春院は彼の前に膝を折って

『お濃殿もわらわも、此度の蒲生殿のご好意をのう思うておりまする。お言葉に甘え、日野にてご厄介になることに致します』

とな態度で告げた。

返答に思わず安堵の笑みを広げる。

『…ただ、日野の城へ立ち退くにあたって、わらわから一つお願いがございます』

『何でございましょう?』

『既にお鍋殿からお聞き及びとは思いまするが、御台様は数日前よりお加減が悪く、立ち居も難儀なご様子じゃ。それ故、

ご容体のことも考えて、お濃殿の輿を誰よりも先に城内から運び出し、そのすぐ後にわらわの輿を運び出してもらいたいのです』

『大方様のお輿も?』

『…ええ。日野までの道中で、お濃殿のお加減が悪うなったら事です故』

まさか孫の正体が明るみになるのを危惧しての事とは言える訳もなく、報春院はあくまでも、嫁のを気遣う優しい姑を演じた。

『左様にございますか。であれば、に命じて、すぐに御台様がお乗りになる輿をこちらまで──』

『いえ、その必要はありませぬ。既に乗物部屋から輿を運び入れ、後はお濃殿を送り出すだけにございます』

『何と…』 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/181113708 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/84/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-109.html

いつの間にそこまで、と賢秀は驚いていたが

『ささ、急ぎ賦秀殿や兵たちにもお伝え下され。お濃殿はすぐにお発ちじゃ』

報春院は疑念を抱く暇を与えまいと、早々に立ち退きの仕度にかからせた。



こうして半刻も経たぬ内に、胡蝶を乗せた御台所の輿が運び出され、そのすぐ後に報春院の輿が、それぞれ警固の兵に護られながら安土城を出ていった。
城は家臣の木村に預けられ、お鍋の方ら側室たちも順々に日野へと退去していったが、

仕えていた女たちは徒歩で従った為、足に血が滲む者もあり、目も当てられぬほど哀れな様子だったという。



日野城に着いてからも、くは慌ただしい日々が続いた。

安土から運ばせた所持品を整理する者もいれば、仮住まいの部屋を居心地の良いように整える者、中には精神を落ち着かせる為に写経をする者もいたが、

その大半は、いずれこちらへも攻めて来るかも知れない明智軍への備えとして、薙刀の手入れや、の仕度を始める者がんどであった。

胡蝶は、報春院と共に二の丸御殿の最奥へ入ったが、日中でも戸を閉め切った部屋の中で過ごし、一切 表には出て来ようとしなかった。

それは無論、密事を守る為でもあったのだが、父母や蘭丸を失った胡蝶自身の傷心が大きく、古沍やお菜津が声をかけてもの空であることが多かった。


──この日も室内に引きこもり、周囲をで囲った上座の内で、ぼんやりとれかかっていた。

畳の上には長い絵巻物が広げられ、胡蝶はそれをろな瞳で眺めている。

『……父上様』

その絵巻物には、馬に乗った信長らしき男の姿と、それに従う蘭丸らしき小姓の姿が、実に繊細な筆使いで描かれている。

かつて、安土城下で行われたえの折に、何とか胡蝶にもその光景を見せてやりたいと、濃姫が絵師たちに命じて描かせた物であった。
  


Posted by beckywong at 21:59Comments(0)

2024年10月10日

してお守り致します」

してお守り致します」

と告げ、それを聞いた信忠の側近・斎藤(斎藤道三の末子)も

「左様にございます。我ら全員が死に絶えましょうとも、殿のお命さえご無事であれば、織田家の天下も朽ちることはございませぬ故」

と希望を与えるように言上した。

誠仁は「…さよか、さよか」と小さく頷きながら、微かにの笑みを浮かべると

「ならば、信忠さんの事はそもじらに任せました。何事もおよしよしに頼みますぞ」

平伏する家臣たちに穏やかに申し渡した。

「…東宮様。まことにおしきことながら、しのお別れにございます」
どうぞ内裏までの道中お気をつけて、と信忠は感慨を込めて告げた。

「信忠さんもな」 https://blog.udn.com/a440edbd/181113662 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/181113687 https://mathew.blog.shinobi.jp/Entry/7/

「はい…」

「有り難ぅ、ご機嫌よぅ」

誠仁は公家らしい挨拶をすると、貞勝らに導かれるようにして足早に座から去っていった。





誠仁親王が、その妻子や公卿衆を連れて御所を脱出すると、斎藤利治ら信忠の家臣たちは、

二条新御所の奥まったに集まって、神妙な面持ちの主君と向かい合った。

信忠はこのまま御所にするつもりであったが、家臣たちの意見はまちまちであった。

「──このまま御所に籠るなど、それこそ死の時を自ら招き入れるようなものにございます!」

「左様。明智勢が押し寄せて参る前に、別へ避難するべきにございます!」

と、信忠に退却をす者もいれば

「明智がどこまで包囲網を張っておるのかも分からぬのに、どこへ避難せよというのじゃ!?」

「にも。に動けば、最悪 雑兵の手に落ちる事になりまするぞ!」

「敵を目の前にして逃げ出すなど武士の恥。やはりこの場にまるべきかと存じます!」

と籠城に賛成する者もおり、信忠の心は揺れていた。

「源三郎は思う?」

信忠は側に控えていた異母弟・津田源三郎(織田勝長)をする。

「はっ──、も無闇に動かれるのは如何なものかと。敵の動きが分からぬ以上、何が命取りになるか分かりませぬ故」

「…そうか」

信忠は深い溜め息を吐くと、目を伏せて腕を組み、暫し考えを巡らせた。
やがて、ゆっくり目を見開くと

「元より、この二条御所にて明智勢を迎え撃つ覚悟である。今更それを変えるような真似は出来ぬ」

信忠は決意的に述べた。

退却派からはとした声が、籠城派からは満足そうな息づかいが漏れた。

「これほどの謀反じゃ。敵も手抜かりのう近辺を包囲し、万一にも我々を逃すことはないであろう」

「されど危険でございます! もしも敵方が、殿の御首を狙うて御所内へ攻め入って参ったら、もはや…」

重臣の一人が声を上げると、信忠は分かっているとばかりに大きく頷いた。

「無論、敵の手に落ちるのはわたしも嫌じゃ。逆臣共の、それも雑兵などの手にかかって死ぬのは、

後々までの不名誉であり、実に無念なことである。そうなるくらいならば、わたしはここで腹を切る」

「 !  早まってはなりませぬ兄上ッ」

「良いのじゃ、源三郎。既に覚悟しておったこと。今更 死など恐れてはおらぬ」

「…兄上…」

「良いのじゃ、もう」

信忠のそうな面差しに、儚げな微笑が広がった。

その神妙な覚悟は痛ましいほどで、一同は無念とばかりに口を真一文字に結ぶと、

涙が溢れ出そうになるのを必死に堪えながら、し顔をけていた。






一方 信長を討った光秀は、燃えて崩れ落ちてゆく本能寺を、未だ茫然とした面持ちで眺めていた。

  


Posted by beckywong at 20:45Comments(0)

2024年10月10日

け眼を大きく見開いた。

け眼を大きく見開いた。

「わたしにも信じ難きことながら、明智光秀の謀反により、本能寺にて果てたとのせが」

「……何ということや、何という…」

誠仁は眉間に深い皺を寄せ、脱力したように側にあったに身体を預けた。

「よもや臣下に討たれるとは、何とおいとしぃ(気の毒な)こと…。信長さんはこなたにとっても、大恩あるお方であらしゃったのに」

誠仁はやりきれない思いでくと、ハッと顔を上げて、まじまじと信忠の顔を見た。

「…信忠さん」

「何でございましょう?」

「こなたも、腹を切るべきであろうか?」

相手の唐突な問いに、信忠も「えっ」となる。

「今の我が身があるのも、よう考えれば信長さんお力添えのお陰や。はもじ(恥ずかし)ながら、こなたもそれをずっと頼りにして参ったよって…。

信長さんのによって成り立った身ぃやから、信長さんがお隠れにならしゃった今、こなたもそれにずるのが道理やないやろか?」

「東宮様…」 https://blog.udn.com/29339bfd/181113621 https://classic-blog.udn.com/29339bfd/181113694 https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/22/

誠仁はそこまで父に恩義を感じてくれていたのかと、信忠は思わず感じ入った。

すると信忠の背後に控えていた貞勝が

「そのを聞いておりましたら、信長公もさぞやお喜びになられた事にございましょう。 ……されど、その必要はございませぬ」

口元に笑みを作りながら、伏し目がちに首を振った。

「何でや!? そもじ(貴方)、よもやこなたには腹を切る覚悟がないとでもお思いか?」
「滅相もございませぬ。──されど、元よりは武辺の者の習わしにございますれば、

きお立場の東宮様が、無理にお従いになる必要はございませぬ」

「無理などしておらぬ。立場など関係なく、己の意思で殉じたいと言うておりますのや」

「さりながら東宮様は、畏れ多くものご嫡子にて、いずれは天下のとなられるお方にございます。

あなた様が次の御主上となられることは、信長公のご意志でもあられたこと。大恩有りとお思いされるのならば、

このまま生き永らえて、そのご意志を叶えて差し上げて下さいませ。さすれば信長公への良きご恩返しにもなりましょう」

貞勝の説得を聞いて、信忠も最もだと言わんばかりに頷いた。

「左様にございます。今は生き延びることを第一にお考え下さいませ」

「──」

誠仁は悩ましげな表情を浮かべていたが、状況が状況である。

無理をく訳にもいかず

「…分かった…。短慮な真似はやめまひょう」

ややあってから重たくした。

「…せやけど信忠さん、そもじはこの先、あそばされるおつもりなのや?」

「ず、このままこちらの御所へ籠りまして、明智勢を迎え撃つ所存にございます」

「これはきょくんな(驚いた)こと。この御所にて…!?」

「はい──。故に東宮様にお願いがございます。こちらの御所は間もなくと化します故、

東宮様、若宮様を始めとする御所の皆様方には、急ぎへお移り下さいますよう、お願い申し上げます」

信忠はと双の手をつかえた。
つい今しがたまでしていた御所を戦場にするというのだから、誠仁は当然のように当惑するであろうと思っていた。

しかし誠仁は、深刻そうな面持ちで軽く首を前に振ると

「…元よりこの御所は信長さんより譲り受けたもんや。どないに扱われるかは織田さんの自由やよって、やは申しませぬ」

殉死の覚悟をしていただけあってか、難色は示さなかった。

「されど心配や。逆臣とは言え、お相手はあの信長さんを討たれた程のお人や。勝ち目はありますのか?」

「それは…」

「よもや、負け戦をなさるおつもりではないですやろな?」

誠仁の問いかけに、信忠は思わず答えあぐねた。


光秀の手勢は一万を超えるが、信忠の手勢はか数百である。

いくら二条新御所の構えが強固でも、御所内にまで攻め込まれたら、どこまでえ切れるか…。


答えぬまま信忠がれていると、貞勝が気丈に

「ご安心下さいませ。例え負け戦になりましょうとも、殿のお命だけは、我ら臣下が身を
  


Posted by beckywong at 20:43Comments(0)

2024年10月08日

「それよりも信長様じゃ!信長様の首を

「それよりも信長様じゃ!信長様の首を一刻も早く取って参るのだ!急げ」

秀満は厳しく言い渡し、彼らを寺の奥へと走らせた。

一方の蘭丸も、信長と濃姫の姿を捜して寺の廊下を駆けていた。

火のまわりが思った以上に早かったらしく、通路のあちらこらで炎が上がり、天井にまで伸びているもあった。

蘭丸が左右に目をやりつつ、書院の方へ進んで行くと

「やああぁぁーー!!」

廊下の角にんでいた敵兵が、前方から襲いかかって来た。

蘭丸は身を交わし、の如き俊敏さで太刀を振るう。

既に数十名を相手にし、蘭丸の細い身体は疲労しきっていたが、ここで力を抜いてはが殺される。https://blog.udn.com/3bebdbf2/181113749 https://classic-blog.udn.com/3bebdbf2/181113792 https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/8/

表で戦っている味方が全員倒れ、明智勢がドッと建物の中に押し入って来るまでに、もうもかからないだろう。

その前に何とか、信長や濃姫の側に行かなくては。

夫妻を全力で守り抜くこと、それが織田家忠臣としての、最後の御奉公であると蘭丸は心得ていた。
蘭丸は、今にも火花が飛び散りそうな程の激しい刀捌きを見せると

「ぐぁぁ!!」

やがて相手の腕やを斬り付けて、その動きを封じた。

敵兵は思わず尻餅ついて倒れ、「待て!ま、待ってくれ!」と手のひらを蘭丸の前に突き出す。

しかし生かしておくことは出来ず、蘭丸は刀を振り上げ、じりじりと相手に近付いてゆく。

獲物を追い詰めた虎のようにな目で、蘭丸はギリッと敵を睨み付けると

「やあーーー!!」

と甲高い声を上げて、太刀を振り下ろした。

その瞬間、ぽた…、ぽたぽた…と、赤い雫が蘭丸の足元に落ちた。

蘭丸は思わず眉をひそめる。

自分が振り下ろした太刀は、目の前にいる兵の頭の、寸前のところで止まっているのに、

何故 自分の足元に、血痕らしきものが点々と落ちているのだろう…。

そう思った瞬間、蘭丸は腹部に異物を感じて、視線を更に下げた。

「……え…」

己の目を疑った。

自分の腹の中心から、槍の先が突き出し、それをつたって血がしたたり落ちている。

やがて全身を駆け抜けるような激しい痛みを感じて振り返ると、別の明智兵が、背後から蘭丸に槍を突き刺していた。

血走った目を、蘭丸が背後の兵に向けるなり

「やあぁーッ!」

という声と共に、前方からも刀が突き出て、蘭丸の腹をいた。

異物感と共に、ツーと冷たい感触が腹部に広がった。

を入れられたような、実に気持ちの悪い冷たさだった。

が、程なくそれは激しい熱に変わり、やがて焼けるような強い痛みに変わった。

「ぐ…ぁ!!」

喉の奥から強烈な金属の味がこみ上げてきたのと同時に、蘭丸の口から、

赤黒い血がぼたぼたと音を立てて床板の上に吐き出された。
やがて、槍と刀が同時に引き抜かれ、支えを失った蘭丸は、糸の切れたのようにバタリと廊下に倒れた。

「…間一髪であったな」

「ああ…助かった」

兵たちはに満ちた表情で言うと、まるで何事もなかったかのように、廊下の先へと駆けていった。

その場に残された蘭丸は、床板を血の海にしながらも、くは微動だにしなかった。

しかし程なく

「─ッ!」

息を吹き返したかのように大きくを震わせると、血溜まりに横顔をすり付けた状態で、

右手を懸命に廊下の先に伸ばし、バン!バン!と、手で床板を
  


Posted by beckywong at 17:04Comments(0)