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2024年08月21日

『 出来れば戦になることだけは避けた

『 出来れば戦になることだけは避けたかったが──よもや開戦やむ無し 』

七日間佐和山城にいた信長勢は、六角氏との戦闘準備を整えるべく、岐阜へと帰国したのであった。





むべく、一万五千の兵を率いて再び岐阜を出立した。

ここに盟友である北近江の浅井長政軍。

そして三河の徳川家康軍などが加わり、信長の軍は総勢五、六万もの大軍となった。

これには義治もやや及び腰になるも

『 …いや、恐れるには及ばぬ。こちらには多くの兵と支城がある上、いざとなれば、三好勢が我らに加勢してくれよう 』

『 織田勢はまず和田山の城を狙うて参るはず…。ならば観音寺城と城の兵で挟み撃ちにしてくれるわ 』


しかし、この六角側の思惑は完全に外れることになる。https://realfreeweb.com/4/posts/1/1/1838596.html https://www.worldranklist.com/preview/article/416230/- https://qwikad.com/1/posts/20/290/2914496.html

愛知川を渡った信長の大軍は途中で三隊に分かれ、稲葉良通が率いる第一軍。

柴田勝家、森可成が率いる第二軍。

丹羽長秀、瀧川一益、木下秀吉が率いる第三軍が、それぞれ和田山城・観音寺城・箕作城へと配置されたのである。


同月十二日の早朝。

現地に赴いた信長軍は休む間もなく箕作城への攻撃を開始した。

しかし

「話には聞いておったが、箕作の城はやはり強固じゃな」

「険しくえ立つ山々が自然の要害となり、一筋縄ではいかぬ…」

守りの固さや地形の問題から、七時間かけても城を落とすことが出来ず、その日は戦闘終了を余儀なくされたのである。


ところが、辺りがすっかり薄暗くなった頃

「な、何じゃ、あれは!?」

「…大きな火玉じゃ…」

「火玉の大軍がこちらに向かってくるぞ!」

百もの松明を手にした秀吉率いる精鋭部隊が、麓に火を放ちながら攻め昇って来たのである。
秀吉のこの突然の夜襲に、本日の戦闘は終わったと思っていた六角勢は慌てふためいた。

一気に守りが弱くなった箕作城は、攻撃に堪えることが出来ず、朝が来る前に落城。

更にこの一報を聞いた和田山城の兵たちは動揺し、織田勢と戦うことなく逃亡したのである。

『 箕作・和田山の城を失ったばかりか、三好からの援軍すらもないとは……よもやこれまでか… 』

落胆した六角承禎、義治親子は、そのまま観音寺城を無血開城。

親子は夜闇に紛れて甲賀へと逃亡したのである。

残りの六角氏の支城も、主君を失ったことにより次々と降伏。

唯一 六角氏の家老・蒲生賢秀だけは、日野城に一千の兵で立て籠り、尚も抵抗の姿勢を見せ続けていたが、

織田家臣・神戸具盛は賢秀の妹を奥方に迎えていた縁があり、彼の強い説得もあって、賢秀も程なく降伏。

質子(後の蒲生氏郷)を差し出して、信長に忠誠を誓ったという。


こうして京までの道を切り開い信長は、同月の内に義昭をして入京。
  


Posted by beckywong at 19:57Comments(0)

2024年08月19日

またいつ何時(なんどき)ご体調を崩され

またいつ何時(なんどき)ご体調を崩されてもおかしくはないお身の上なのです。今はご安静が第一の時。

城移りのお疲れも癒えぬあなた様を外へ出し、万が一ご容体が悪化でもしたら、責めを受けるのは私共にございます」

「……」

「お類様とて左様な事態はお望みではないはず。お分かりになられましたら、そうのようなご短慮は、以後お慎み下さいませ」

千代山が居丈高に申し述べていると

「──慎むのはそなたの方じゃ」

張りのある声が、ふいに部屋の外から響いて来た。
千代山がはっとなって振り返ると、入側に、三保野たち侍女衆を従えた濃姫の姿があった。

正室の突然のお成りに、千代山も、その周りに控えていた女たちも慌てて平身低頭してゆく。

「…お濃様…」

類も驚き、急いで床(とこ)から身体を起こそうとする。

「そのままで構いませぬ。ご無理をなさらぬよう」

濃姫は気遣いがちに告げると、ゆっくりと室内に足を踏み入れ、類が横たわる絹布団の傍(かたわ)らへと腰を下ろした。

と同時に、錐(きり)のように細まった双眼で、濃は平伏(ひれふ)す千代山を見据えた。

「千代山殿」 https://www.moneyformybeer.com/In-the-age-of-the-empowered-consumer https://freelancer1.bloggersdelight.dk/2024/08/16/%e2%94%80%e2%94%80%e3%81%9d%e3%81%ae%e7%bf%8c%e6%97%a5%e3%80%82/ https://realfreeweb.com/4/posts/1/1/1842642.html

「…はい」

「仮にも類殿は、お世継ぎ奇妙丸君のご生母として、正式にこの小牧山の城へ迎え入れられた貴きお方じゃ。

その類殿に対して、今の苦言を呈するような厳しき言の葉は、いくらご老女殿とは申せ、いささか度が過ぎてはしまいか?」

姫に窘められ、千代山は面目なさそうに一礼を垂れる。

「これは…大変ご無礼つかまつりました。 申し上げるべきことをしかとお伝えせねばと思う余り、礼節を欠いてしまったようにございます」

ご容赦下さいませと、千代山が素直に詫びると

「……とは申せ、千代山殿が申されたことに間違いは何一つありませぬ」

濃姫は次に、床の中の類へ視線を移した。

「病を患(わず)ろうておられるとは申せ、嫡子生母として城へ迎えられた以上、類殿が上に立たれるお立場となられたことは事実。

勝手気儘なご発言はもとより、下の者たちへの迷惑を考えぬお振る舞いは、貴人の奥方としてあるまじきことじゃ」

「……」

「今後はかようなことの無きよう、くれぐれもお気をつけなされよ」

「……はい。申し訳ございませぬ」

類は枕に乗せた頭を、弱々しく下げた。

「三保野」

「はい、姫様」

「悪いが、皆を連れて暫し下がっていよ。類殿と二人だけで話があります」

「承知致しました──」

「千代山殿も下がってたもれ」

「…はい」

三保野と千代山は静かに頭を垂れると、他の侍女たちを引き連れて、速やかに座を辞した。


パタンッ…

入口の襖が隙間なく閉じられ、女たちの気配が完全に部屋の前から消えると

「なれど、貴人とて人間ですものね。時には我が儘を言うても良いかも」

濃姫は冗談っぽく言い、類に微笑みかけた。
類は緊張と困惑の波に煽られ続けていた己の心が、姫の笑顔によって、優しく解きほぐされてゆくのを感じていた。

「お濃様…」

「類殿。こうしてあなたと顔を合わせるのも、随分と久方ぶりのことですね。健勝に過ごされて──」

濃姫は言いかけるなり『おっと…』という風に、手で軽く口元を押さえた。

「私としたことが。健勝であれば、お床の人にはなっておられませんね」

姫がはにかむように笑うと、類もその窶れ顔に微かな笑みを湛えた。

「ご危篤の知らせを伺った時は、私も殿も本当に心配致したのですよ」

「…多大なご迷惑をおかけし、お二方にはほんに申し訳なく思うておりまする」
  


Posted by beckywong at 18:33Comments(0)

2024年08月08日

ふいに放たれた元康の言葉に

ふいに放たれた元康の言葉に、濃姫は、自分の身体の中から何か熱いものが抜け出てゆくのを感じた。

「戦乱の世にございますれば、騙し、裏切りは常事にございます。某も人の子なれば、いざという折には義よりも甘い蜜を選ぶやも知れませぬ」

つい先程 軍事同盟を結んだばかりにも関わらず、元康は怖めず臆せず、きっぱりと謀反の可能性を提示した。

濃姫は驚いたが

『 しかし、それもまた世の道理…。殿とて、それをも覚悟の上で元康殿と手を結ばれたのであろう 』

と、素直に受け入れる自分もいた。

神妙な面持ちで黙り込む姫を、元康は軽く見やると

「なれどそれは、信長様以上の甘い蜜があればの話にございますが」 https://network-89730.mn.co/posts/63344248 https://www.nuhart.com.hk/blog/new/2023/04/29/%E3%80%90%E6%A4%8D%E9%AB%AE%E6%B5%81%E7%A8%8B%E3%80%91%E6%A4%8D%E9%AB%AE%E7%97%9B%E5%97%8E%EF%BC%9F%E6%A4%8D%E9%AB%AE%E9%BA%BB%E9%86%89%E9%81%8E%E7%A8%8B%E6%98%AF%E6%80%8E%E6%A8%A3%E7%9A%84%EF%BC%9F/ https://carina.jimdosite.com/

と、穏やかに笑んだ。

「信長様が並々ならぬお力を秘めておられることは、某の目から見ても分かりまする。

姫様が申されるように、信長様がいずれ天下を取られるのであれば、それはそれで、同盟相手である某にとっても喜ばしき事。

忠義の心に雲を差さぬだけで、他に並ぶ者のない、強力な後ろ楯を得ることが出来るのでございますから」

「元康殿…」
「無論、某も武士なれば天下を取りたいという夢はありまする。が、分相応に風が吹くという言葉もございます。

某の天下取りは、信長様が為された後で充分──。 それまでは、この元康、心命にかけて信長様を支え、お助けする所存にございます」

そう言って元康は朗らかに微笑(わら)うと

「故に濃姫様。これよりは末永いご昵懇(じっこん)の程をよろしくお願い申し上げます。ご夫君の同盟相手として、また、信長様を慕う者同士として」

「まぁ──」

濃姫の柔らかな双の頬に、可愛らしい笑窪が浮かんだ。



この後 元康は、亡き今川義元から賜った “ 元 ” の字を返上して、その名を『 家康 』と改称。

西三河、奥三河を平定し、念願であった三河国統一を果たすことになるのである。

また、三河統一を成し遂げた同年には「従五位下・三河守」を朝廷より叙され、その姓を松平から『徳川』に改姓し、

着々とその勢力を伸ばしていったが、濃姫の懸念であった信長との同盟関係は崩れることなく、

(元康改め)家康の忍耐強さも相まって、信長逝去のその日まで続くことになるのである───。






三河との同盟を成立させた信長は、それからあまり時が経たぬ内に、美濃攻略に向けて本格的に動き始めた。

まずその手始めとして彼が最初に目をつけたのは、自身の本拠地であった。

現本拠地である清洲は、尾張の中心にあり、比較的裕福な土地柄であったが、

如何せん、龍興がおわす稲葉山城からは、少々距離が離れ過ぎている。

よって信長は、出来るだけ敵方の城に近い場所に新たな居城を築き、美濃攻略に備えようと考えていた。


《 ───なれども、本拠を移すとなれば、家臣たちにも、また民たちにも新城下へ移ってもらわねばならぬ故、どこへ城を移すかは慎重に決めねばなるまい 》


《 美濃に近いに超したことはないが、清洲から遠過ぎれば、引っ越しにも難儀致す故、家臣たちから不満が出よう 》
  


Posted by beckywong at 23:10Comments(0)

2024年08月08日

「いえ、大したことではないのですが…、

「いえ、大したことではないのですが…、如何様(いかよう)な名目でこの絵を常在寺へ寄進致せば良いのかと思いまして」

「名目?」

「畏れながら───近頃は美濃と尾張の間で戦が続き、あちら側の織田勢への対抗心、警戒などは特に厳しきものとなっておりまする。

そのような最中(さなか)に、確かな名目もなく父上様の絵姿を菩提寺に納めたのでは、

龍興殿や重臣らに目を付けられはしまいかと思いまして…。常在寺には母上様も、笠松殿ら侍女衆もおります故」

「何じゃ、左様なことか」

信長は気楽そうに微笑(わら)った。

「懸念は無用じゃ。たかだが親父殿の絵姿一枚寄進するくらいのことで、寺の姑殿らに危害を加えるほど、美濃勢も落ちぶれてはおるまい」

「…ならば良いのですが」 https://network-89730.mn.co/posts/63340676 https://cutismedi.com.hk/expert/11/%E4%BF%9D%E5%A6%A5%E9%81%A9%E7%98%A6%E9%9D%A2%E9%87%9D https://debsy.jimdosite.com/
「なれど名目が欲しいと申すのならば、この儂が龍興めらを討ち果たし、見事美濃を手に入れたその戦勝祝いに事寄せて───という筋書きも悪くないのではないか?」

その細面に勝ち気な笑顔を覗かせる信長を見て、濃姫はふふっと笑った。

「では、この絵が御軸に仕上がるまでに美濃を手に入れて下さりませ。せっかくの父上様の絵姿を、箪笥の肥やしにしておくのは嫌でございます故」

「…仕上がるまでにとは、なかなかの難題を突き付けてくるのう」

「さすがの殿でも、やはり無理にございますか?」

無理という言葉に、信長は眉根をグッと寄せる。

「…ば、馬鹿を申すな!儂を誰だと思っておるのじゃ。あの今川義元を討ち取った男ぞ!無理な訳がなかろう」

「まぁ、それは実に頼もしいこと。ではこの絵が完成するまでに…、遅うても三月(みつき)以内にお願い致しまする」

「何!?」

「私は三保野たちと共に、美濃への引っ越しの支度を整えて待っております故」

「…お…応。楽しみに、しておれ」

「はい」

信長の背中が次第に弱々しく丸まってゆくのを、姫は可笑しそうに、また微笑ましげに見つめていた。

やがて信長は、場の空気を変えるように太股をパンッとひと叩きすると

「おお、そうじゃ。そちにもう一つ申し伝えておくことがあった」

如何にも今思い出しましたという風情で話し始めた。

「近く、この清洲の城に松平元康が参ることになったぞ」

「松平元康……まぁ、竹千代殿が!?」
「そうじゃ、あの竹千代だ。何じゃ、ちゃんと覚えておったのじゃな」

「無論にございます。義元殿との戦の折は敵味方に分かれてしまい、殿と竹…いえ、元康殿のご心情は如何(いか)ばかりかと、三保野らと共に案じていたのですよ」

濃姫は入口に控える三保野と目を見合せ、頷き合った。

「左様であったか。──されどそれも昔の話じゃ。今や元康は今川より独立する旨を露にし、三河の国を取り戻さんと躍起になっておるわ」

「確か、あの桶狭間での戦の後、元康殿は今川軍に抑えられていた岡崎の城へ無事にお戻りになられたとか?」

「ああ。義元逝去の報に慌てふためいた今川兵らが、早々に城を捨てて撤退してくれたおかげでな」

「岡崎の城は代々松平氏の居城。元康殿もそこで生まれ育ったと聞き及びまする。

生家というべき城を取り戻せたのですから、元康殿もさぞやお喜びのことでございましょう」

「武士としては戦勝をもって取り戻したかったやも知れぬが、まあ、これもあの者の運命(さだめ)なのであろう。

今川よりの離反も、またそれにしかりじゃ。義元亡き今、今川は衰退の一途を辿っておるからな…。
  


Posted by beckywong at 22:28Comments(0)

2024年08月06日

畳に手をつかえながら、昂然と述べた。

畳に手をつかえながら、昂然と述べた。

「分かっております。その覚悟ならば、とうに出来ておりまする」

濃姫の顔に強気な笑みが浮かぶのを認めると、千代山も微かに笑みを綻ばせて

「それでは、私はこれにて」

と静かに頭を下げ、座を辞する素振りを見せた。

しかし千代山はその首をもたげるなり

「……」

徐(おもむろ)に濃姫の腹部に視線を当てて、鋭い眼でじっと眺めた。https://ameblo.jp/freelance12/entry-12862505616.html https://debsy.e-monsite.com/blog/--5.html https://blog.udn.com/79ce0388/180878787
「千代山殿?」

濃姫は思わず眉をひそめたが、やがて彼女の視線が自分の腹に向いているのに気が付いた。

姫は何か徒ならぬものを感じ、打掛の両の褄を素早く前に引くと、サッと腹部を覆い隠した。

同時に千代山の集中も途切れ、あっとなって姫の顔に視線を戻す。

「千代山殿───何か?」

「……いえ…。ご無礼つかまつりました」

今ひと度一礼を垂れると、千代山は打掛の裾を翻(ひるがえ)して、足早に御居間から出て行った。


千代山がいなくなった室内に、数秒、葬儀の後のような重苦しい沈黙が流れていた。


ややあって

「今のは…、いったい何なのであろうか?」

濃姫の訝しげな声色が静寂を打ち破った。

三保野もお菜津も訳が分からず「─さぁ」と、小首を傾げるばかりである。

「よもやとは思うが、私の懐妊のこと、千代山殿に伝えているのではなかろうのう…?」

濃姫は思い付くままに言った。

懐妊を勘繰らせるような素振りがあった訳でも、格別に腹が目立っている訳でもない。

見た目での判断は難しいはず。

とすれば、何処からか情報が漏れたとしか考えられなかった。

しかし三保野は

「まさか!それはあり得ませぬ。 姫様が誰にも申すなと命じられました故、大方様にもお市様にも、誰にも申し上げてなどおりませぬ」

と、瞬時にかぶりを振った。

これにはお菜津も同意して

「他の侍女たちにも、“ これは公の問題故、今は誰にも口外してはならぬ” と、硬く口止めしてあります故、情報が漏れることなど、まず持ってございませぬ」

千代山の耳に伝わるはずはないと、きっぱり否定した。

「されど、先程の千代山殿のご様子では…」

「姫様、それは少々お考え過ぎなのでは? あれだけでは、千代山様がご懐妊に気付いているとは申せますまい」

「左様にございます。他のことを考えていらしたのやも知れませぬし」

三保野とお菜津は、姫を安堵させようとして言うが

「いや、捨て置く訳にはいかぬ」

一番敏感な私情に触れられた故か、濃姫はなかなか懸念を捨て去ることが出来なかった。

「三保野。一先ず、侍女たちを召し出し、懐妊の件を漏らした者がおらぬか聞き出して──…」


「きゃあぁぁー!!」


濃姫が三保野に命じていた、その刹那。

居間の外から、絹を裂くような女の悲鳴が響いて来た。
突然のことに室内の三人は「え…」となり、瞬時に襖の開け放たれた出入口に視線を向けた。

「何事じゃ…、今の悲鳴は何じゃ?」

濃姫は膝を乗り出すようにして、誰となく訊ねる。

「分かりませぬ。何かあったのでございましょうか?」

三保野が怪訝な面持ちで、上座と出入口とへ交互に目を向けていると

「見て参る」

言うが早いか、濃姫は上座の茵から立ち上がり、そのまま居間の外へと出て行った。

「そんな、姫様なりませぬ! 私共が見て参ります故。 姫様、お待ちを…!」
  


Posted by beckywong at 21:44Comments(0)

2024年08月02日

8月2日の記事

されど、万一儂が落命した後は、以前申した通りじゃ。皆々好きな道を歩まれよ。間違っても殉死(じゅんし)が武士の美徳であるなどとは、努々(ゆめゆめ)思うでないぞ」

分かったな、と諭すように言う道三の頬に深い笑い皺が寄った。

家臣たちも、どこかでこれが主君から告げられる最後の言葉だと確信していたのかも知れない。

この時ばかりは反論する者もなく、皆々黙って道三の言うことに耳を傾けていた。

ややあって、重臣たちの傍らに控えている光秀に目をやった道三は

「光秀よ。そちに一つ、頼みがある」

と呟くような声量で言うなり、そっと光秀の耳元に口を近付け、何かを囁いた。

「 !?  そ、某がでございますか?」

「そうじゃ。それが済んだら、後はどこへなりと好きな所へ行くが良い」 https://classic-blog.udn.com/a440edbd/180846781 https://mathew.blog.shinobi.jp/Entry/6/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-102.html

「…大殿…」

「さらばじゃ光秀。達者で暮らすのだぞ」

道三が笑んで告げると、光秀は今にも泣き出しそうな表情になりながらも、耐え忍び、慇懃に一礼を垂れると

「大殿から受けました大恩、この光秀、生涯忘れは致しませぬ。──これにて…おさらばにございます」

脱兎の如き勢いでその場から離れ、馬に股がって、どこかへ走り去ってしまった。

「大殿、光秀殿はいったいどちらへ?」

道空が白髪混じりの太眉をひそめながら伺うと、道三は遠ざかってゆく蹄(ひづめ)の音に耳を傾けながら

「何、未来の主君候補の面を、一足先に拝みに行かせただけよ」

脂の浮かんだ丸顔に、清々しい程の笑みを湛えるのだった。

それから一時も経たぬ内に、道三、そして義龍の両軍が、それぞれに陣を構えて対峙した。

初めは道三勢の柴田角田と、義龍勢の長屋甚右衛門による一騎討ちとなり、二人は両軍の真ん中で激しくぶつかり合った。

勝負は道三側の柴田が長屋の首を挙げ、晴れがましい手柄を立てたが、その後は両軍ともに双方からかかり合い、敵味方が入り乱れる大乱戦となった。

道三勢は最初こそ優勢に戦を進めていたが、小規模な道三の軍が二万近い義龍軍をいつまでも抑え続けられる訳もなく、

一人、また一人と味方の兵たちは倒れてゆき、とうとう道三の前に義龍勢が押し寄せて来たのである。

やがて義龍側の長井忠左衛門道勝が、道三と渡り合うべく、彼のもとに突進して行った。

道三は自ら太刀を振るい、組み付いて来る道勝と大いにもみ合った。

道勝は道三を討ち取るのではなく、生け捕りにして義龍に引き渡すつもりであったが、

そこへ小牧源太なる荒武者が走り来て、まるで手柄の横取りを図るように、道三の脛(すね)をザッと薙ぎ払ったのである。

「あっ!」と声を上げ、思わず体勢を崩した道三をそのまま押し伏せ、源太は奇声を発しながら己の太刀を大きく振り上げた。

その刹那、地に頬を付ける道三の老眼に、澄み切った快晴の空が映った。

目が痛くなる程の青々とした空である。

そんな空に、幻しか、はたまた誰かの血が飛び上がったのか、道三は一匹の紅い蝶を見た気がした。

その蝶は二枚の美しい羽を優雅にはばたかせながら、尾張の方角から稲葉山城のある方角に向かって真っ直ぐ飛んでゆく。
  


Posted by beckywong at 00:58Comments(0)

2024年08月02日

「──我が父は先の美濃守護

「──我が父は先の美濃守護・土岐頼芸殿、蝮の道三にあらずッ! 父上の無念を晴らすべく、憎き道三の首、必ずやこの手におさめて見せようぞ!!」



多くの家臣らや、新国主を土岐氏の血筋と信じてやまぬ者共からの厚い支持を受けていた義龍は、

状勢に緊迫感が増し始めた今とばかりに、その重い腰を上げ、道三を討ち果たすべく挙兵したのである。

既に孫四郎・喜平次を殺めたことで腹が据わっていたのか、彼の顔には、もはや戸惑いも、躊躇いの色すらもなかった。

ただひとえに、実父を美濃から追いやり、己を蔑(ないがし)ろにし続けた仇の首を、我が名をもって討ち取りたい──。

そんな、復讐を成し遂げようとする男の敢然とした表情が生々しく浮かんでいたのである。

謀反を謀反とも思わぬ傲慢さで、義龍は自身を支持する者たち、その数ざっと一万七千五百余名もの大軍勢と共に、道三と相見(あいまみ)えるべく出陣したのであった。
一方。鶴山へ登り、美濃中央部を眼下にして陣を構えていた道三勢は https://classic-blog.udn.com/29339bfd/180846720 https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/20/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-100.html

「い…一万七千五百じゃと……。光秀殿、その数に間違いはござらぬのか!?」

「はっ、違(たが)いございませぬ。義龍様を指示する者共が思いの外多く、家臣、豪族の方々はことごとく義龍様の側に付きましてございます!」

光秀が持ち帰った報を聞き、堀田道空を始めとする道三方の重臣たちは、皆々仰天嘆息した。

道三も白髪混じりの太眉をピクリと微動させたものの、概ね冷静沈着といった構えで聞いている。


「一万七千…、我々の六倍もの軍勢ではござらぬか」

「こちらは集めに集め、ようやっとの二千七百余名の手勢というに」

「人員だけならば完全なる敗北じゃ。聞けば安藤守就殿、稲葉良通殿らも、あちら側に付いたというではないか!?」

「もはや打つ手無しじゃ。僅か二千の軍勢で、如何にして二万近い軍に立ち向かえというのか…」

「これ!揃いも揃って!大殿の前で何たる弱気な事を申しておるのだ!」

思わず弱音を漏らす朋輩を、春日丹後が目頭をつり上げながら窘めていると

「構わぬ。儂とて今そう思うておったところじゃ」

「し、しかし大殿…!」

「叱ったところで状勢は変わらぬ。丹後、一先ず落ち着くのだ。皆々もじゃ」

道三はその言葉通り、至極冷静な態度で重臣らに呼びかけた。

「手勢が集まらぬは儂の不徳の致すところ──。若気の至りとは申せ、美濃を我がものにしたい一念にかられ、

口では言えぬような数々の悪行を重ねて参った。これは世に言う自業自得。あの折の報いが、このような形で返って来たのであろう」

自嘲するような渇いた笑い声を響かせる道三に

「大殿、まだ望みをお捨てになってはなりませぬ!美濃からの味方が募れないのであれば、尾張から募れば良いではありませぬか!」

道空は必死の形相で訴えた。

「尾張…、婿殿のことか?」
「左様。信長殿は帰蝶様のご夫君にございますれば、岳父たる大殿の大事とあらば喜んで援軍を寄越して下さいましょう!」
  


Posted by beckywong at 00:39Comments(0)

2024年08月01日

「儂が馬鹿にして言うたのかどうかは

「儂が馬鹿にして言うたのかどうかは、そちも実際に婿殿と膝を突き合わせてみれば分かるであろう。

なかなかの気風、気迫の持ち主じゃ。きっと己との器の違いをとくと見せ付けられようぞ」

権高な微笑を浮かべる道三に憤りを感じたのか、義龍はバンッと床を一叩きすると

「…もう良いわ!このような話をそなた様に相談しようと思うた某が愚かでござった!」

奥歯を固く噛み締めながら、勢い良く立ち上がった。

義龍の大きな身体が、岩のように道三の前に立ちはだかる。

「信長殿へ戦を仕掛けるのは、美濃の家臣、領民の行く末を考えての事でもございます!そなた様が止めようとも、いずれ某は尾張攻略の為に兵を上げまする!」

「悪い事は言わぬ。手勢を無駄死にさせたくなければ、やめておく事じゃな」 https://ameblo.jp/freelance12/entry-12861603000.html https://plaza.rakuten.co.jp/aisha1579/diary/202407280002/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/228720fcde50c87595f109d0fe234996

「今の斎藤家当主は某にございます!そなた様の指図を受ける筋合いはございませぬ!」

「──義龍殿」

ふと、端に控えていた小見の方が生真面目な視線の矢を飛ばして来た。

「先程から聞いておりますれば、父上であられる大殿様に対して“そなた様、そなた様”と。何故に父上様と申されませぬ?」
すると義龍は、その屈強な体格には似合わぬ虚ろな表情を覗かせて

「…某には、孫四郎や喜平次と違い、父上を父上と呼べぬ苦労がございまする」

と、呟くように言った。

「儂を父上と呼べぬ苦労とは、何のことじゃ?」

「某にそれを訊かれるのですか?」

「何じゃと」

「先の美濃守護・土岐氏が我が実父かも知れぬと、某の口から言わせるおつもりなのですか?」

「義龍殿、その仰り様はあまりにも──」

窘めようとする小見の方を、道三は手で合図して制すると

「義龍。そちは、実の父は儂ではなく土岐氏じゃと、まことにそう思うておるのか?」

射抜くような眼差しを相手に注ぎながらも、落ち着いた口調で問いかけた。

義龍は夢想に耽るような表情を作り、暫し宙に視線をあそばせると、ややあって、その場にはそぐわない和やかな微笑を浮かべた。

「…ずっと以前」

「 ? 」

「尾張へ輿入れる前の帰蝶に、それと同じ様なことを訊かれました。“ご自分が父上の御子ではないとお思いなのですか?”と」

「帰蝶に?」

「某はその時、今のところはそう思ってはいないと答え申した。土岐氏の子などという話は噂に過ぎぬ、我が父は斎藤道三をおいて他にはおらぬと、そう思っておりました故」

「義龍─」
「なれど今や、その思いもすっかり色褪せ申した。考えてみれば、そなた様とはこれまで親子らしい触れ合いなどまるでありませなんだ。

可愛いがられるのは決まって孫四郎、喜平次ら弟たちばかり。刀や槍の稽古とて一度も付き合ってもらった事はありませぬ」

「……」

「そなた様にとって某は、嫡男を名乗るだけのただの無能者──。前美濃守護・土岐頼芸殿が残していかれた厄介な胤(たね)にしか過ぎなかったのじゃっ!」

獲物を狙う獣のような、生々しくも凄絶な光を帯びた義龍の眼を見て、小見の方はぞっとなった。

それでも道三は微塵も動じる事なく、毅然と頭をそびやかしている。

「申しておきたい事は、それだけか?」

「─!?」

「それだけならば早々に下がれ。子供じみた泣き言を黙って聞いているほど儂はお人好しではない。 …小見!侍女たちを呼び戻せ、酒肴の用意じゃ!」

「は、はい…!」

小見の方が慌てて額づくと

「今一度言うておく。命大事と思うならば、婿殿には手を出すな。
  


Posted by beckywong at 00:18Comments(0)