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2024年06月28日

「私が力を尽くすまでもなく

「私が力を尽くすまでもなく、あのお方が至極真っ当な道を歩まれていることに気付いたからです」

清廉な面持ちで告げる濃姫を前に、政秀は訳が分からないとばかりに眉を歪めた。

「平手殿。申し訳ないが、殿の素行の問題に関しては力を貸せそうにない。

下手にお止めして、あのお方の才能が発揮される、妨げにはなりとうございませぬ故」

「……」

「ただし、もう一つの平手殿の願いに関してだけは、素直にその御意に従いましょう」

「もう一つ?」 https://willardgladdenn.blog.jp/archives/5548348.html https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/06/25/182037?_gl=1*qf7wr6*_gcl_au*MTY2OTkwNTc4OC4xNzE4OTcyMTIz https://travelerbb2017.zohosites.com/

「申されたではございませぬか。“ 何卒、信長様のお味方になって差し上げて下さいませ ”と」

姫の言葉を受け、政秀はあっとなる。

「…そ、それでは、お方様」

驚く政秀に、濃姫は目で頷いた。

「なれど、ただの味方ではございませぬぞ」

「 ? 」

「この世において他に並ぶ者のない、唯一無二の味方でございます」

真摯な表情をつくりながらも、濃姫はどこか冗談めかした口調で政秀に告げた。
どのような経緯があって、姫がそのように決意したのかは政秀にも検討が付かなかった。

が、また新たな信長の理解者が現れたという事実に、彼はこの上ない喜びを感じていた。

「お方様…」

政秀は徐に地面に片膝をつくと、感謝の意を示すように、それは低く頭を下げた。

相手の白い頭を暫し感慨深げに眺めた濃姫は、軽く会釈を返した後

「参ろうか」

三保野たちを連れて、そっと奥へと戻って行った。

政秀は去ってゆく一行の背中を、同じ姿勢のまま、ただ黙って見送っていた。





「──畏れながら姫様。そろそろ私にも、教えて下されても良いのではありませぬか?」

奥の御座所へ戻る道すがら、三保野は静かに話を切り出した。

「何の話じゃ?」

「決まっておりましょう。昨夜の殿とのことでございます」

「その話か」

「分かっておられるくせに、また左様にお惚(とぼ)けになられて…。

皆々不思議に思っているのですよ。今まで一度も奥へはお泊まりになられなかった殿が、

昨夜は珍しくお泊まりになった挙げ句、喜ばしきことに姫様とご同衾あそばされたのですから」
「よさぬか。閨の話などをこのようなところで致すのは」

濃姫は思わず頬を染め、辺りをきょろきょろと見回した。

「良いではありませぬか。皆 知っていることなのでございますから。
…それで、いったいどのような手管をお使いになられたのです!?」

「三保野」

「はい」

「しつこい」

「──…」


濃姫は呆れたように嘆息を漏らすと、真っ白な陽光が降り注ぐ廊下の縁へと進んだ。

そこから天を仰ぐと、雲一つない澄み渡った青空が、実に穏やかな表情をして自分を見下ろしていた。

昨夜の嵐が嘘のような、本当に美しい青空だった。

この空の下に、信長が勝ち得たき天下が広がっている。

そう考えるだけで、姫の心は期待と興奮で弾んだ。

今はまだ夢物語なれど、信長を信じていれば、あの空に手が届く日も来るだろう。

いずれ、きっと──。


空を見上げる濃姫の顔に、降り注ぐ陽光のような、暖かく柔らかな微笑が浮かんでいた。

濃姫が織田家へ輿入れた、同年の十一月上旬。


シュ…、シュシュッ…

那古屋城・奥御殿の庭先では、銀色に輝く冷たい光が、前から後ろへ、

時には右から左へと、何ともぎこちなく飛び交っていた。

その光を、三保野ら濃姫付きの侍女たちが、廊下の縁から大層不安げな面持ちで眺めている。
  


Posted by beckywong at 19:42Comments(0)

2024年06月28日

「はははっ」と、やや仰け反りなが

「はははっ」と、やや仰け反りながら笑い続ける信長が、ふいに身体を前に起こした時

「……何の真似じゃ?」

信長は笑うのを止め、瞬間的に表情を固くした。

今まさに濃姫が、道三から与えられたあの短刀を鞘から引き抜いて、

冷たく光るその切っ先を、信長の目の前に突き付けているところだった。

濃姫は白く細い腕を必死に伸ばしながら、強い眼光で信長を見据えている。https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/bcaebf4784d5e625d45b89ee30fc38eb https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/06/27/201147?_gl=1*gin2y7*_gcl_au*MTY2OTkwNTc4OC4xNzE4OTcyMTIz https://ameblo.jp/freelance12/entry-12857678764.html


「初の褥の席で、殿はこうも仰いました。“やり手の蝮殿のこと、大方そちに儂を殺めるよう吹き込んでいるのであろう”と」

「……」
「それに答えを出すのだとしたら、ええ、仰る通りでございます。
これは、その為に父上様から頂戴致した御刀。信長という男が真のうつけであった時は、刺し殺せと」

信長は向けられている短刀をチラと見ると

「…それで、この刀で儂を刺すつもりなのか?」

射抜くような眼で濃姫の真面目顔を見た。

すると姫は和やかな微笑を浮かべて、スッと短刀を握るその手を膝の上へ下ろした。

「いいえ。殿がうつけでないと分かった今、私にはもう、あなた様を殺める理由はありませぬ」

刀を鞘に収めると、濃姫はそれを両の掌の上で固く握り締めた。

「それにこれは、私の守り刀でもあるのです。父上様から頂いた大切な御刀……出来るならば、血で汚(けが)しとうはございませぬ」
そう真摯に語る濃姫を見つめながら

「じゃが、刀という物はすべからく何かを斬るために作られた物じゃ。使わねば意味がなかろう」

宝の持ち腐れだと信長は言った。

「確かにそうやもしれませぬ…。なれど、刀を持つ者によって、その使い道も違(ちご)うてくるのではありませぬか?」

「ならば、そなたはこの刀を今後どのように使うつもりなのだ?」

「そうですね。されば私は…」

濃姫は手にしている短刀を今一度眺めると、それを畳の上に置き、押し出すようにしてサッと信長の前へ差し置いた。

「私は、自らがこの刀を使わぬ道を選びまする」

信長の眉が波うつように歪んだ。

「殿。父上様から頂いたこの守り刀、あなた様にお託し致しまする」

「…じゃがこれは、そなたが大事とする刀ではないのか?」

思わず信長が訊くと、濃姫は伏し目がちに頷いた。
「父や母が持たせてくれたどの嫁入り道具よりも、私にとってはこの刀が最も大切でございます。

何せこの刀には、尾張へ輿入れするにあたっての、私の決意と覚悟が全て宿っております故」


信長は御前に置かれた短刀を手に取ると、それを感慨深げな面持ちで眺めた。


「その刀を殿に託すことが、今の私に出来る、あなた様への精一杯の忠誠の証にございます」

「……なるほどのう。この刀を差し出すことで、儂の信頼を得ようという訳か」

「いいえ。殿に差し出したのは、刀そのものではございませぬ」

「どういう意味じゃ?」

「殿──。もしもこの先、この刀が誰ぞの血で汚(けが)れることがあるとすれば、それは、私自身の血でございます」

姫の言葉に、信長の細い双眼が驚きに見開かれた。

「まさかそなた、この儂に、自分の命を差し出すと申しておるのか !?」
「御意にございます。 もしもこの先、私が殿を裏切るような真似をした時は──どうぞ、その刀で私を刺して下さいませ」

「……」

姫の大胆な発言に初めは呆気に取られていた信長だが、暫しの間の後、口の両端をゆるやかにつり上げた。

「儂に、己の命を託してまで忠誠を誓うとは、なかなかに見上げた心意気じゃ。

なれどそなた、それが何を意味しているのか、しかと分かっておるのであろうのう?」

濃姫は答えず、宙に視線を遊ばせている。
  


Posted by beckywong at 18:19Comments(0)

2024年06月24日

「今日はいい。それより、少し休ませてくれ」

「今日はいい。それより、少し休ませてくれ」
三重吉は民子の顔も見ず、自室へ入った。

それから二日間、秋雨が降り続いていた。
風倉家の人々は同居していた孟の死を、四十九日まではすことにした。

「うちの庭を通って、大学へ行く孟さんの姿が目に焼きついて離れません」
民子は自室にいる三重吉に、そう伝えた。

「いい青年だったな」

「ええ。残念でなりません」
民子の目に涙がこぼれる。

「孟くんのご両親も大変だろうから、折りを見て下宿の荷物を山口県のご実家に送ってあげるといい。頼むぞ」
と三重吉は民子に告げ、民子は部屋を出て行った。https://blog.udn.com/79ce0388/180749628 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180749628
https://freelancer.anime-voice.com/Entry/76/
「奥様、ひゐろさんが食べていないので、おをつくっておきました。ひゐろさんの部屋の前に置いてあります」

女中は縁側を通る民子にそう言い渡すと、民子は

「ありがとう。ひゐろの部屋に行ってみるわ」
そう言って、民子はひゐろの部屋に向かった。「ひゐろ開けるわよ」を開けると、ひゐろは布団に入ったままだった。

「そろそろ食べないと、身体に毒よ。ここにおがあるわ。食べましょう」

「いいの。放っておいて」
ひゐろは、布団の中に潜った。

「そのままでいいわ。少し話をしましょう」
ひゐろの布団の横に座布団を敷き、民子は座った。そして続けた。

「孟さん、ひゐろを日舞の教室に迎えに行く途中の事故だったらしいわ。桜木神社の近くで起きたようよ」

「……私を迎えにさえ行かなければ、孟さんは亡くならずにすんだのに」
ひゐろは、大声を上げて泣きはじめた。

「あの日、私は孟さんを送り出したわ。とてもうれしそうに、出かけて行ったわよ。『ひゐろさんはとても素直な女性です』と言っていた」

ひゐろはしゃくり上げて、泣き続けている。

「きっと孟さんは、ひゐろのことを愛していたのね。いつもうれしそうに、迎えに行っていたもの」

「……お願い、母さんやめて」
ひゐろは、布団の中で泣きじゃくった。

「泣きたいだけ泣けばいいわ。愛している人を失うことほど、悲しいことはないから」

「……」

「十代のあなたなら、なおさらだわ。初めての経験ですもの」そう民子が言うと、布団からひゐろが飛び出し、民子の胸に抱きついた。

「あぁ……孟さん、なぜ私を置いて逝ってしまったの!」

民子はひゐろを強く抱きしめ、背中をさすった。

「……先日、お母様が玄関に置いてあった下駄のことをたずねたでしょう?」
ひゐろは民子に抱かれたまま、そう切り出した。

「桜の絵のついた赤い鼻緒の下駄ね」

「実はあの下駄は、孟さんからの贈り物なの」

「そうだったの。だから新しい下駄があったのね。大事にするといいわ」

「ええ。履かずにそばに置いておく」

「きっと孟さんも喜ぶわ」

「下駄を見つめるたびに、泣いてしまいそうだわ」
ひゐろはまた、涙を流した。

ひゐろは、再び布団に入った。

「お父さんも、ひゐろのことを心配していたわ。飲まず食わずだから」

「……そう」

「お父さんは『しばらく車も、いらない』とおっしゃっていたわ。ひゐろのお迎えに行かせて本当に良かったのかと自責の念に駆られているみたい」

ひゐろは、泣き顔のままうなずいた。

「とりあえず、ゆっくりするといいわ。おだけは食べてね」

「……はい」

民子はひゐろの部屋を出ようとすると、の外から女中の声がした。「……斉藤英太郎さん? 斎藤もしや……孟さんの同級生の?」
ひゐろは布団から飛び出し、玄関に走って行った。

そこには、袴姿の書生が立っていた。

「……ご無沙汰しております。この度は、ごです」
斎藤は、ひゐろに深く頭を下げた。

そのような斎藤の姿を見て、ひゐろは再び涙を流した。

「こんなに孟さんが早く逝ってしまうなんて……」

「僕も信じられません」
斎藤はうつむいた。

「せっかくですから、どうぞお上がりください」
民子は、斎藤に声をかけた。

「それでは、飯田の部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか」
斎藤がそう切り出すと、ひゐろは
  


Posted by beckywong at 22:57Comments(0)

2024年06月24日

十七時に銀座の時計台の前で

十七時に銀座の時計台の前で、孟さんが待っている。

早く行かないと、孟さんが待ちくたびれるわと思いつつ、
こんなひどい姿の私を孟さんはどう思うだろうか?と。

ひゐろは、それが気になってならなかった。

何とか御茶ノ水駅を探し出し、ひゐろは乱れた姿のまま電車に飛び乗った。乱れた髪と着物のまま、ひゐろは銀座駅を降りた。

足袋のまま走るひゐろを見て、通り過ぎる人は皆、振り返る。

ひゐろはそれを意にも介さず、時計台前の孟の元に向かった。

こんな姿を見てさぞ驚くであろうと思いつつも、ひゐろは孟が待っていることが気になって仕方がなかった。

時計台の前には、孟がいた。車を停め、時計台を見つめていた。

その姿を見た途端、ひゐろは涙が止まらなくなってしまう。https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180745407 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/75/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-95.html

孟もひゐろに気づき、ひゐろのもとに走り出す。
そしてひゐろは、孟の胸に飛び込んだ。

「……とりあえず、車に乗ろう」

孟は自分の羽織を脱ぎ、ひゐろの身体を包んだ。
そして肩を抱きながら歩き、ひゐろを車に乗せた。

「大丈夫か」

泣きじゃくりながら、ひゐろはうなずいた。

孟はハンドルを回しながら、ひゐろに声をかけた。

「東銀座に、呉服屋がある。とりあえず、そこで足袋と下駄を買おう」

『さのや』という呉服屋の前で車を停め、二人は店の中に入った。

「足袋と下駄が欲しいのですが」

孟がそう言うと、呉服屋の女が二人に近づいた。
ひゐろの姿を「まずは奥へ行きましょう。着物を整え、髪も結い直したほうがいいですね」
と言った。

「……ありがとうございます」
ひゐろは呉服屋の女に連れられ、奥に入った。

呉服屋の女の手を借りて身支度を整えたひゐろは、足袋と下駄を選ぶことにした。

ひゐろは店の中を歩き回り、商品を見てまわった。

「この白い足袋と、そちらの赤い鼻緒の下駄をいただきます」

そう言って財布を広げようとすると、孟はその手を留め、

「ここは私が払います」
と言う。

「そんなわけには、まいりません」

「まぁ、たまには良いではないですか。を購入してあげたいところですが、書生ゆえご勘弁を」

「……とんでもない!大事に使います。ありがとうございます」

『さのや』を出た時には、すでに日が暮れていた。

車を運転しながら、孟は言った。

「今日は、私が大学に遅くまでいたことにしよう。そしてお迎えが遅くなったと話そう」

「…そんな」

ひゐろはどうしたらいいのかと考えたが、良い考えが浮かばなかった。

「孟さん、私に何があったのか聞かないのですね。あのような姿で、銀座を走っていたのに」

ひゐろは、孟にそう訊ねた。「正確なところはもちろんわからないけど……だいたい想像はつきます」

「……」

「でも、走って泣きながら私のもとにやってくるところを見ると、それがひゐろさんの素直な気持ちだと思いましたし」

ひゐろは、言葉を失った。

「もうすぐ着きますよ。今日起きたことは黙っておきましょう。お迎えが遅くなったと言うことで、話を通そう」

「……孟さん、ありがとう」

“仕事を辞めろ”とは言わないんだな、とひゐろは思った。
だからこそ、余計に胸が痛んだ。

孟の提案通り、ひゐろは今日の出来事を家族に話さず、普段通りに過ごした。

ところが翌朝、民子が玄関先でひゐろを呼ぶ。

「ひゐろ、ちょっと来て!」

ひゐろは玄関に向かうと、民子は

「いつものはどうしたの?しかも赤い鼻緒の下駄を買ったようだけど」
と言う。

「だいぶ汚れてきたから、処分したの。そして下駄を買ったのよ」

「の代わりに下駄?」

民子は、やはりが必要なことも多いから、用意しておきなさい」

「はい」

ひゐろは母の指摘に驚いたが、何もなかったようにそう返事をした。数日後、銀座の口入れ屋に、再びひゐろは顔を出した。

「浮かない顔をしているわね。何かあったの?」
前を向くと、そこには依子が立っていた。

「ええ。オートガールの仕事が結構大変なので」
  


Posted by beckywong at 22:00Comments(0)