2023年07月27日
そのとき、斎藤がふ
そのとき、斎藤がふきだした。
「新八さんと左之さんらしい。わたしはこれからずっと、あなたがたのことを、喰いしん坊と記憶しつづけるんでしょうな」
「なにいってやがる、斎藤。まぁ、否定はせんがな」
永倉は、苦笑しつつごつい掌で斎藤の肩を叩く。
「ああ。おまえららしいよ。案ずるな。かっちゃんがなにかいおうとしても、さきに夕餉をってさえぎってやるから」
副長も苦笑している。
夕餉は、すこしでもわかれをひきのばすいい訳にもなる。
「相棒、腹が減っているだろう?宿で、https://classic-blog.udn.com/79ce0388/179576049
https://classic-blog.udn.com/79ce0388/179578208 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/53/ 沢庵をだしてくれたらいいんだがな」
みおろすと、いつものように「ふんっ」とツンツンしている。
そのやりとりを、永倉と原田がききつけたようである。二人とも歩をとめてこちらへ向き直ると、ちかづいてきて相棒のまえで両膝をおる。
先頭の副長と斎藤も、おれと肩を並べている双子も、同様に歩をとめてその様子をみ護る。
町は、すっかり静かになっている。まだ宵の口。いつもであれば、人通りもある時刻なのであろう。敵が迫りつつあるいま、町の人々もそれを肌で感じている。
なにより、幕府軍が、敵に蹂躙されるくらいなら、町に火を放って焼き払ってしまうつもりだといういう噂が流れている。すでに、江戸の町を引き払い、逃れている人々もすくなくない。
その噂は、まったくのガセではない。勝は、西郷との会談が失敗するようなことになれば、江戸の町を焼き払うつもりで、そのように指示していたという。かくいう、新門辰五郎ら火消したちにである。逆にいうと、勝は、それだけの覚悟をもって、会談にのぞんだというわけである。
結果的に、会談は成功する。ゆえに、江戸の町も焼き払われずにすむ。もっとも、上野の戦など、局地的に戦闘がおこなわれるので、江戸の町も無傷というわけにはいかないが。
それでも、壊滅はまぬがれる。
というわけで、人通りがないので、おれたちが道の真んなかでなにをしようが、不都合はないわけである。
もっとも、だれかが通ったしても、幕府の兵士が小者を連れてあるいている、くらいにしか思わないだろうけど。できるだけ、かかわりあいにならないようにするだろう。
「兼定、ゆっくり挨拶できぬやもしれぬのでな。いまのうちにいっておく。世話になったな。愉しかった。これからは、散歩係よりおまえのほうが頼りになる。斎藤や俊冬や俊春とともに、土方さんやみなを頼むぞ」
ちょっ、永倉。このシリアスなシーンで、まだおれをこけおろすのか?
それは兎も角、二人は相棒のまえに両膝をおり、目線をあわせる。
「兼定。おまえには、おれの体躯の面倒までみてもらった。おまえの体躯のすべて、おれは一生忘れないぞ」
ちょっ、原田。両刀であるばかりか、そっち系の異常性癖の持ち主だっていうのか?ってか、両刀っていうところも疑惑の域をこえてはいないが・・・。「あぁそういや、左之はよく兼定を湯婆がわりにしていたよな」
「ああ、新八。ったく、林とよくとりあったもんだ。あいつは、紀伊の出身のくせに、寒がりでいかん」
「あー、左之さん。それは、目糞鼻糞というのではなかろうか?」
斎藤が、さわやかな笑みとともに突っ込む。
そういえば、そうだった。原田は、沢庵で相棒をつっていたんだった。
当然のことながら、ほっとする。
でみるなよ。案ずるな。おれたちは、だれかさんよりずっとしっかりしているし、要領もいい。生きて、またおまえに会える。なぁ、左之?」
「ああ。かならずな」
その瞬間、相棒がまずは永倉を、ついで原田のを、具体的には頬をなめた。といっても、べろり、というわけではない。あくまでも控えめにペロリといった程度である。
驚きである。こんなこと、する相棒ではないのに・・・。
「くすぐったい。ああ、約束だ」
永倉は、鼻の頭を相棒のそれへとあわせる。ついで、原田もおなじように鼻と鼻をすりあわせる。
それを、副長や斎藤、双子がにやにや笑いでみている。おれも、にやにや笑ってしまっている。
泣く子もだまる新撰組の組長二人が、相棒にでれでれなのだから。
そして、おれたちはまたあゆみはじめた。
「そんな 宿に戻ると、ちょうど夕餉の最中であった。とはいえ、全員ではなく、疲れきって部屋で泥のように眠ったまま起きてこない者もいるという。
疲れより、喰い気が勝っている者が、大広間でもりもり喰っている。
一番手前にいる隊士の膳をのぞくと、鰺かなにかの魚のひらきに納豆、野菜盛りだくさんの味噌汁に漬物に白米の飯という、朝食メニューのごとき夕餉である。
「あっ、双子先生」
「新八さんと左之さんらしい。わたしはこれからずっと、あなたがたのことを、喰いしん坊と記憶しつづけるんでしょうな」
「なにいってやがる、斎藤。まぁ、否定はせんがな」
永倉は、苦笑しつつごつい掌で斎藤の肩を叩く。
「ああ。おまえららしいよ。案ずるな。かっちゃんがなにかいおうとしても、さきに夕餉をってさえぎってやるから」
副長も苦笑している。
夕餉は、すこしでもわかれをひきのばすいい訳にもなる。
「相棒、腹が減っているだろう?宿で、https://classic-blog.udn.com/79ce0388/179576049
https://classic-blog.udn.com/79ce0388/179578208 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/53/ 沢庵をだしてくれたらいいんだがな」
みおろすと、いつものように「ふんっ」とツンツンしている。
そのやりとりを、永倉と原田がききつけたようである。二人とも歩をとめてこちらへ向き直ると、ちかづいてきて相棒のまえで両膝をおる。
先頭の副長と斎藤も、おれと肩を並べている双子も、同様に歩をとめてその様子をみ護る。
町は、すっかり静かになっている。まだ宵の口。いつもであれば、人通りもある時刻なのであろう。敵が迫りつつあるいま、町の人々もそれを肌で感じている。
なにより、幕府軍が、敵に蹂躙されるくらいなら、町に火を放って焼き払ってしまうつもりだといういう噂が流れている。すでに、江戸の町を引き払い、逃れている人々もすくなくない。
その噂は、まったくのガセではない。勝は、西郷との会談が失敗するようなことになれば、江戸の町を焼き払うつもりで、そのように指示していたという。かくいう、新門辰五郎ら火消したちにである。逆にいうと、勝は、それだけの覚悟をもって、会談にのぞんだというわけである。
結果的に、会談は成功する。ゆえに、江戸の町も焼き払われずにすむ。もっとも、上野の戦など、局地的に戦闘がおこなわれるので、江戸の町も無傷というわけにはいかないが。
それでも、壊滅はまぬがれる。
というわけで、人通りがないので、おれたちが道の真んなかでなにをしようが、不都合はないわけである。
もっとも、だれかが通ったしても、幕府の兵士が小者を連れてあるいている、くらいにしか思わないだろうけど。できるだけ、かかわりあいにならないようにするだろう。
「兼定、ゆっくり挨拶できぬやもしれぬのでな。いまのうちにいっておく。世話になったな。愉しかった。これからは、散歩係よりおまえのほうが頼りになる。斎藤や俊冬や俊春とともに、土方さんやみなを頼むぞ」
ちょっ、永倉。このシリアスなシーンで、まだおれをこけおろすのか?
それは兎も角、二人は相棒のまえに両膝をおり、目線をあわせる。
「兼定。おまえには、おれの体躯の面倒までみてもらった。おまえの体躯のすべて、おれは一生忘れないぞ」
ちょっ、原田。両刀であるばかりか、そっち系の異常性癖の持ち主だっていうのか?ってか、両刀っていうところも疑惑の域をこえてはいないが・・・。「あぁそういや、左之はよく兼定を湯婆がわりにしていたよな」
「ああ、新八。ったく、林とよくとりあったもんだ。あいつは、紀伊の出身のくせに、寒がりでいかん」
「あー、左之さん。それは、目糞鼻糞というのではなかろうか?」
斎藤が、さわやかな笑みとともに突っ込む。
そういえば、そうだった。原田は、沢庵で相棒をつっていたんだった。
当然のことながら、ほっとする。
でみるなよ。案ずるな。おれたちは、だれかさんよりずっとしっかりしているし、要領もいい。生きて、またおまえに会える。なぁ、左之?」
「ああ。かならずな」
その瞬間、相棒がまずは永倉を、ついで原田のを、具体的には頬をなめた。といっても、べろり、というわけではない。あくまでも控えめにペロリといった程度である。
驚きである。こんなこと、する相棒ではないのに・・・。
「くすぐったい。ああ、約束だ」
永倉は、鼻の頭を相棒のそれへとあわせる。ついで、原田もおなじように鼻と鼻をすりあわせる。
それを、副長や斎藤、双子がにやにや笑いでみている。おれも、にやにや笑ってしまっている。
泣く子もだまる新撰組の組長二人が、相棒にでれでれなのだから。
そして、おれたちはまたあゆみはじめた。
「そんな 宿に戻ると、ちょうど夕餉の最中であった。とはいえ、全員ではなく、疲れきって部屋で泥のように眠ったまま起きてこない者もいるという。
疲れより、喰い気が勝っている者が、大広間でもりもり喰っている。
一番手前にいる隊士の膳をのぞくと、鰺かなにかの魚のひらきに納豆、野菜盛りだくさんの味噌汁に漬物に白米の飯という、朝食メニューのごとき夕餉である。
「あっ、双子先生」
Posted by beckywong at 20:02│Comments(0)
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