2025年01月23日
多摩、試衛館と呼ばれる道場に麗は
多摩、試衛館と呼ばれる道場に麗は身を寄せていた。
試衛館は天然理心流の剣術を学ぶ町道場だが、北辰一刀流剣術、神道無念流剣術と言った一流道場のように金はない。
一流道場と張る土地を所有しているが、門下生30人が在籍する中、学費が一ヶ月一円と破格の値段で近藤は門下生に剣術を教えていた。
「近藤さんは人が良すぎる……」
ボソッと呟く麗は道場に駆けて行く門下生達を目で追った。
道場の入口はごった返し、だんだんと甲高い威勢のよい声が道場の中から聞こえる。
「麗、なにをしてるんですか、道場に行かないんですか」 https://freelancer1.bloggersdelight.dk/2025/01/20/%e3%80%90%e5%a5%b3%e3%81%a7%e3%81%82%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%82%82%e7%94%b7%e3%81%a8%e5%af%be%e7%ad%89%e3%81%ab%e6%b8%a1%e3%82%8a%e6%ad%a9%e3%81%91%e3%82%8b%e3%82%88%e3%81%86%e3%81%ab/ https://realfreeweb.com/389/posts/1/1/1922117.html https://www.worldranklist.com/preview/article/629017/-
「……さぼる奴ばっかり」
こいつも床掃除をさぼってる……なのに塾頭…師範代…免許皆伝
道場に歩いていく総司を見ながら麗は、目を細めた。
総司と呼ばれた人物は沖田総司。
十代で天然理心流、師範代、そして免許皆伝と言った、いわば剣の天性を持つ人物だ。
両親の死後、九歳で試衛館に内弟子として身を寄せていた。
細身な体で愛嬌のある八重歯をのぞかせる総司は、麗に対し、小首を傾げている。
「麗??」
「なんでもない」
「総司、麗はきっとあれなんだよ」
総司の横に立つ可愛らしい青年は、総司に耳打ちしたが、聞いた瞬間沖田は青年の頭を叩いた。
「いったああ!!叩くなよ!!」
「はしたないですよ、藤堂さん」
「はしたないとか本当だろ!!」
藤堂と呼ばれた人物は、藤堂平助。
こちらも原田、永倉と共に食客として試衛館に身を寄せていた。
こちらの出は立派な藩士の子だが、悪ガキのように、藤堂は口を尖らせた。
「麗あれなんだろ、月ものの「変態、さっさと道場に行けば」
馬鹿ばっかり……あいつもさぼり
麗は手拭いを投げつけようとしたが、すでに藤堂の姿はなかった。
麗と目があった総司は、気まずそうに目を逸らした。
「総司も早く道場に行けば」
「ええ……先に行ってますね」
沖田も藤堂の後を追うように、その場から離れていった。総司の姿を目で追う麗は、桶に手拭いをつけたが、水が余波を起こす様子を見つめていた。
……昔はこんなんじゃなかったのに……
【宗次郎はなにになりたいの??】
変に壁がある……
手拭いを絞りながらポチャンと水滴が桶の中に落ちれば、麗は目を細めた。
「すみません……総司君はいますか?麗さん」
「お菊さん」
麗の元に寄ってきた女性は軽く頭を下げた。
お菊とは試衛館の近くに住む町娘だ。
ちょくちょく試衛館に足を運ばせては、門下生に差し入れを提供していた。
総司…あぁ…
麗は軽く頭を下げると、お菊を道場へ案内した。
道場の中は熱気がむんむんしている。
門下生が素振りから1対1の面打ちを繰り返す中、沖田は木刀を片手に、門下生の動きを歩きながら指導していた。
パシンと門下生の足を木刀で叩く沖田は、稽古になったら人が変わる。
「動きが遅い、手で木刀を振るな、体で振って下さい」
「はい、沖田先生。」
゙体??ってなんだ……″
試衛館は天然理心流の剣術を学ぶ町道場だが、北辰一刀流剣術、神道無念流剣術と言った一流道場のように金はない。
一流道場と張る土地を所有しているが、門下生30人が在籍する中、学費が一ヶ月一円と破格の値段で近藤は門下生に剣術を教えていた。
「近藤さんは人が良すぎる……」
ボソッと呟く麗は道場に駆けて行く門下生達を目で追った。
道場の入口はごった返し、だんだんと甲高い威勢のよい声が道場の中から聞こえる。
「麗、なにをしてるんですか、道場に行かないんですか」 https://freelancer1.bloggersdelight.dk/2025/01/20/%e3%80%90%e5%a5%b3%e3%81%a7%e3%81%82%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%82%82%e7%94%b7%e3%81%a8%e5%af%be%e7%ad%89%e3%81%ab%e6%b8%a1%e3%82%8a%e6%ad%a9%e3%81%91%e3%82%8b%e3%82%88%e3%81%86%e3%81%ab/ https://realfreeweb.com/389/posts/1/1/1922117.html https://www.worldranklist.com/preview/article/629017/-
「……さぼる奴ばっかり」
こいつも床掃除をさぼってる……なのに塾頭…師範代…免許皆伝
道場に歩いていく総司を見ながら麗は、目を細めた。
総司と呼ばれた人物は沖田総司。
十代で天然理心流、師範代、そして免許皆伝と言った、いわば剣の天性を持つ人物だ。
両親の死後、九歳で試衛館に内弟子として身を寄せていた。
細身な体で愛嬌のある八重歯をのぞかせる総司は、麗に対し、小首を傾げている。
「麗??」
「なんでもない」
「総司、麗はきっとあれなんだよ」
総司の横に立つ可愛らしい青年は、総司に耳打ちしたが、聞いた瞬間沖田は青年の頭を叩いた。
「いったああ!!叩くなよ!!」
「はしたないですよ、藤堂さん」
「はしたないとか本当だろ!!」
藤堂と呼ばれた人物は、藤堂平助。
こちらも原田、永倉と共に食客として試衛館に身を寄せていた。
こちらの出は立派な藩士の子だが、悪ガキのように、藤堂は口を尖らせた。
「麗あれなんだろ、月ものの「変態、さっさと道場に行けば」
馬鹿ばっかり……あいつもさぼり
麗は手拭いを投げつけようとしたが、すでに藤堂の姿はなかった。
麗と目があった総司は、気まずそうに目を逸らした。
「総司も早く道場に行けば」
「ええ……先に行ってますね」
沖田も藤堂の後を追うように、その場から離れていった。総司の姿を目で追う麗は、桶に手拭いをつけたが、水が余波を起こす様子を見つめていた。
……昔はこんなんじゃなかったのに……
【宗次郎はなにになりたいの??】
変に壁がある……
手拭いを絞りながらポチャンと水滴が桶の中に落ちれば、麗は目を細めた。
「すみません……総司君はいますか?麗さん」
「お菊さん」
麗の元に寄ってきた女性は軽く頭を下げた。
お菊とは試衛館の近くに住む町娘だ。
ちょくちょく試衛館に足を運ばせては、門下生に差し入れを提供していた。
総司…あぁ…
麗は軽く頭を下げると、お菊を道場へ案内した。
道場の中は熱気がむんむんしている。
門下生が素振りから1対1の面打ちを繰り返す中、沖田は木刀を片手に、門下生の動きを歩きながら指導していた。
パシンと門下生の足を木刀で叩く沖田は、稽古になったら人が変わる。
「動きが遅い、手で木刀を振るな、体で振って下さい」
「はい、沖田先生。」
゙体??ってなんだ……″
Posted by beckywong at
21:35
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2025年01月08日
更に最大の悲劇は、あの時の城下町の火
更に最大の悲劇は、あの時の城下町の火災を飯盛山から見ていた白虎隊が会津城の落城だと誤認し、士中二番隊の青少年全員が自刃した。
一人だけ蘇生し、今に語り継がれているのだが。
他にも妻子、母や娘、女はほとんどが自刃している。
たくさんの人々が自ら命を絶つという凄まじい惨劇となってしまった。
なんだかそれを聞いてから、何故こんなことをしているのか、わからなくなった。
どうして、お互いが国の事を思っているのに、こんなにたくさんの人々が命を落とさなければならない。
わからない。
わからない。
でも、皆胸を張って言える。
「俺は悪くない」
と。誰も悪くないのだ。
本当に、何故、こんな惨劇に…。
………わからない。
「土方くん」
「大鳥さん!」
大鳥はやつれた顔で新撰組の陣に顔を出した。https://plaza.rakuten.co.jp/mathewanderson/diary/202412250000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/b10d20fe881ecdbe15cdd9be0a418fb8 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/12/25/173717?_gl=1*1r07ceg*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ.
「すまない…私の責任だ。
私が、是が非でも母成峠に戦力を集めていれば…」
「過ぎたことだ。仕方ねぇよ。会津城さえ取り返せばまたこっちのもんだ」
土方は笑った。
「そのことなんだが…」
大鳥は言いにくそうに口を開いた。
「はぁ!?会津から手を引く!?あんた正気か大鳥さん!!」
土方は大鳥の胸ぐらに掴み掛かった。
「あぁ。正気だ。我々は仙台に向かってそこから榎本の戦艦に乗って、蝦夷地へ向かう……」
「すいません。水を差すようで悪いですが、それには賛成できません」
「君は……立花くんか」
大鳥は美海を見た。
「そうだ!!じゃあ会津はどうなる!?この状況でこいつらを見捨てんのかよ!!こんな状態の会津を、見捨てろっていうのか!?」
土方の怒りは収まらない。
「見捨てるのではない」
「それに、容保公が戦ってんのに、俺らは、あの人のおかげでここまで来たんだ!」
「あぁ。知っている…。容保公は残るらしい。君達に伝言だ。
お前達がここで死んだらどうなる。この国はこのままだ。こんな所で朽ちるな。次へ進め。
会津は俺の国だ。俺が最後まで残る。
だそうだ」
「松平さん……」
松平は慶喜と共に大阪城から逃げたと聞いていた。
腐っても侍だったってことか。
「私も、そう思う。我々がここで朽ちてしまえば誰が新政府軍に抵抗するのだ。蝦夷地へ、行こう」
「でも……!」
土方が叫ぼうとしたと同時にまた、陣の布が上がった。
「行ってくれ。土方さん」
「佐川さん!!」
そこにはボロボロになった佐川が立っていた。
「あんた、ボロボロじゃないですか!!」
この中の誰よりもボロボロだ。
それでも堂々と立っているところを見ると、タフだなと思う。
「こんぐらいどうってことないさ」
「でもっ…!」
「テメーの国ぐらい最後までテメーで見送らせてくれ」
佐川は笑った。
土方はそれ以上何も言えなかった。
「……土方さん…今回は、私は大鳥さんの意見に賛成です」
「……総司」
「蝦夷地へ、行きましょう」
きっと、沖田が人でなしとか、そういうのじゃなくて、この状態をしっかり全体から見ての意見だったのだろう。
沖田だって、会津を放っておきたくない。
「行ってくれ。土方さん」
佐川は相変わらず笑っている。
辺りは急に静まり返り、後は土方の決断を待つだけとなった。
「……土方さん。ならば俺が残ります」
「斉藤さん!?」
美海は目を見開いた。
「俺が残って、会津を最後まで見届ける」
「本気か?」
「あぁ」
斉藤は頷いた。
今まで、長い間会津といたからだろうか。
彼も彼なりの義理がある。
「近藤さんの墓は俺が守り通します。だから、あなたは思う存分暴れてきてください」
「斉藤くん…」
「あんたは喧嘩師なんだろう?」
斉藤は笑った。
「……あぁ」
土方も目を伏せて笑った。
私達はそれから斉藤さんと別れを告げ、直ぐに会津を去ると仙台へ向かった。
一人だけ蘇生し、今に語り継がれているのだが。
他にも妻子、母や娘、女はほとんどが自刃している。
たくさんの人々が自ら命を絶つという凄まじい惨劇となってしまった。
なんだかそれを聞いてから、何故こんなことをしているのか、わからなくなった。
どうして、お互いが国の事を思っているのに、こんなにたくさんの人々が命を落とさなければならない。
わからない。
わからない。
でも、皆胸を張って言える。
「俺は悪くない」
と。誰も悪くないのだ。
本当に、何故、こんな惨劇に…。
………わからない。
「土方くん」
「大鳥さん!」
大鳥はやつれた顔で新撰組の陣に顔を出した。https://plaza.rakuten.co.jp/mathewanderson/diary/202412250000/ https://blog.goo.ne.jp/debsy/e/b10d20fe881ecdbe15cdd9be0a418fb8 https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/12/25/173717?_gl=1*1r07ceg*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ.
「すまない…私の責任だ。
私が、是が非でも母成峠に戦力を集めていれば…」
「過ぎたことだ。仕方ねぇよ。会津城さえ取り返せばまたこっちのもんだ」
土方は笑った。
「そのことなんだが…」
大鳥は言いにくそうに口を開いた。
「はぁ!?会津から手を引く!?あんた正気か大鳥さん!!」
土方は大鳥の胸ぐらに掴み掛かった。
「あぁ。正気だ。我々は仙台に向かってそこから榎本の戦艦に乗って、蝦夷地へ向かう……」
「すいません。水を差すようで悪いですが、それには賛成できません」
「君は……立花くんか」
大鳥は美海を見た。
「そうだ!!じゃあ会津はどうなる!?この状況でこいつらを見捨てんのかよ!!こんな状態の会津を、見捨てろっていうのか!?」
土方の怒りは収まらない。
「見捨てるのではない」
「それに、容保公が戦ってんのに、俺らは、あの人のおかげでここまで来たんだ!」
「あぁ。知っている…。容保公は残るらしい。君達に伝言だ。
お前達がここで死んだらどうなる。この国はこのままだ。こんな所で朽ちるな。次へ進め。
会津は俺の国だ。俺が最後まで残る。
だそうだ」
「松平さん……」
松平は慶喜と共に大阪城から逃げたと聞いていた。
腐っても侍だったってことか。
「私も、そう思う。我々がここで朽ちてしまえば誰が新政府軍に抵抗するのだ。蝦夷地へ、行こう」
「でも……!」
土方が叫ぼうとしたと同時にまた、陣の布が上がった。
「行ってくれ。土方さん」
「佐川さん!!」
そこにはボロボロになった佐川が立っていた。
「あんた、ボロボロじゃないですか!!」
この中の誰よりもボロボロだ。
それでも堂々と立っているところを見ると、タフだなと思う。
「こんぐらいどうってことないさ」
「でもっ…!」
「テメーの国ぐらい最後までテメーで見送らせてくれ」
佐川は笑った。
土方はそれ以上何も言えなかった。
「……土方さん…今回は、私は大鳥さんの意見に賛成です」
「……総司」
「蝦夷地へ、行きましょう」
きっと、沖田が人でなしとか、そういうのじゃなくて、この状態をしっかり全体から見ての意見だったのだろう。
沖田だって、会津を放っておきたくない。
「行ってくれ。土方さん」
佐川は相変わらず笑っている。
辺りは急に静まり返り、後は土方の決断を待つだけとなった。
「……土方さん。ならば俺が残ります」
「斉藤さん!?」
美海は目を見開いた。
「俺が残って、会津を最後まで見届ける」
「本気か?」
「あぁ」
斉藤は頷いた。
今まで、長い間会津といたからだろうか。
彼も彼なりの義理がある。
「近藤さんの墓は俺が守り通します。だから、あなたは思う存分暴れてきてください」
「斉藤くん…」
「あんたは喧嘩師なんだろう?」
斉藤は笑った。
「……あぁ」
土方も目を伏せて笑った。
私達はそれから斉藤さんと別れを告げ、直ぐに会津を去ると仙台へ向かった。
Posted by beckywong at
01:31
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2025年01月07日
近藤が目を閉じた時だった。
近藤が目を閉じた時だった。
「かっちゃーん!」
聞き覚えのある声に、昔の呼び名。近藤はゆっくり顔を上げ、目を開けた。
「かっちゃん!!」
「ミツさん…」
沖田の姉、ミツが大衆の中から叫んでいる。
「かっちゃん!かっちゃんはかっこよかったよ!!武士の中の武士だよ!!」
わざわざ来てくれたのか…。
「勇さん!!」
「…ツネ…!」
その隣には、ツネが立っていた。
他にも声がたくさんあがっているのに、今は彼女の声しか耳に入らなかった。
「勇さん!大好きですよ!」
そんなこと言ったら、ツネの身分がバレるじゃないか。
ツネは必死に叫ぶ。
普段、そんなことあまり聞いたことがなかった。
「大好きです!ずっと、大好きです!また、あの不味いおにぎり、食べてくれますか!?」
ツネはついに涙を流しながら聞いた。
でも、涙を流しているのに、顔は笑っていた。
「あぁ!!当たり前だ!!あれは最高に旨かった!!ツネ!俺も好きだぞ!ずっとずっと、大好きだ!」
近藤がそう叫ぶと、ツネは大きく頷いて、笑った。
もう本当、俺は幸せ過ぎるよ。
皆に、言いたいこといっぱいある。
でも、一つだけ、一つだけ言うなら、さよならでもごめんでもない。https://johnsmith.e-monsite.com/blog/--10.html https://share.evernote.com/note/120b44e4-2c00-0248-f755-c1839689e7d9
https://blog.udn.com/3bebdbf2/181569981
「ありがとう」
近藤はそう言って笑うと、そこで意識を手放した。
慶応4年、4月25日。
この時代を騒がせた新撰組の局長、近藤勇の歴史はここで幕を閉じる。
彼が背負ってきたものはあまりに大きかったが、信頼する仲間がいたから、彼はやっていけた。
こうして誠の男、近藤勇は笑いながら、永遠の眠りについた。
ほどなくして、私達は近藤さんの死を知らされた。
それはあまりに突然すぎて、なんの実感も沸かなかった。
「……近藤さん…最期に…なんて言ったんですか…?」
沖田さんは震える声でそう聞いていた。
「楽しかった、ありがとうって」
「そうですか」
おミツさんがそう答えると、沖田さんは今にも泣きだしそうな顔で、笑っていた。
その笑い顔が印象的だった。
その後、おミツさんはどこかへ行くと言っていたけれど、どこへ行くかは近藤さんの死しか頭にはなくて、覚えていない。
それから実は、土方さんが泣いている所は見ていない。
コンコン…
「土方さん。ここにお食事置いときますよ」
「あぁ」
というより、土方さんをしばらく見ていない。
あれから、療養に入ったのだが、部屋には誰も入れず、籠りっぱなしだ。
多分、誰にも見せずに泣いているのだと思う。
土方さんが気付かれたくないのなら、私達は絶対に気付いていない振りをするし、何も言葉は掛けない。
土方さんには心を整理させる時間が必要だと思う。
それに、何か言葉を掛けたところでそれは気休めにもならない。
言葉とか、そういうのじゃないと思う。
土方さんと近藤さんのことは、自分で前に進んでもらうしかない。
だから私達は土方さんの心に整理がつくまで、いつまでも待てる。
近藤さんは、切腹でなく、斬首だったと聞かされた。
あの人は、『武士』としての誇りを持ち続けていたから、斬首じゃなくてせめて、切腹にさせてあげたかったけど、笑って死んでいったのならそれでも良かったのかもしれない。
それに、最後まで寝返らず、自ら死を選んだ。
最後まで、新撰組としての誇りを捨てなかった。
それだけで十分だ。
近藤さんの首はあれから板橋に3日間晒されると、京都の三条河原に晒されたらしいが、首はいつの間にか姿を消した。
どこに行ったのか、わからない。
私達は、わざと首は見に行かなかった。
近藤さんは、きっとそれを望んでいないから。
そんなことを毎日考えて、月日が流れた。
沖田さんも、少しは立ち直ったように見える。
彼も、夜な夜な抜け出して、物思いにふけっているのを知っているが、それも皆知らないふり。
口には出さずとも、皆近藤さんのことを思っている。
仲間って、そういうもんだと思う。
ガラッ
そんな中、いつもは開かない襖が空いた。
「お前ら。会津へ向かうぞ」
「ひ……土方さん!!」
部屋からのっそりと土方が出てきたのだ。
すっかり足は完治したのか、何事もなかったように立っている。
「かっちゃーん!」
聞き覚えのある声に、昔の呼び名。近藤はゆっくり顔を上げ、目を開けた。
「かっちゃん!!」
「ミツさん…」
沖田の姉、ミツが大衆の中から叫んでいる。
「かっちゃん!かっちゃんはかっこよかったよ!!武士の中の武士だよ!!」
わざわざ来てくれたのか…。
「勇さん!!」
「…ツネ…!」
その隣には、ツネが立っていた。
他にも声がたくさんあがっているのに、今は彼女の声しか耳に入らなかった。
「勇さん!大好きですよ!」
そんなこと言ったら、ツネの身分がバレるじゃないか。
ツネは必死に叫ぶ。
普段、そんなことあまり聞いたことがなかった。
「大好きです!ずっと、大好きです!また、あの不味いおにぎり、食べてくれますか!?」
ツネはついに涙を流しながら聞いた。
でも、涙を流しているのに、顔は笑っていた。
「あぁ!!当たり前だ!!あれは最高に旨かった!!ツネ!俺も好きだぞ!ずっとずっと、大好きだ!」
近藤がそう叫ぶと、ツネは大きく頷いて、笑った。
もう本当、俺は幸せ過ぎるよ。
皆に、言いたいこといっぱいある。
でも、一つだけ、一つだけ言うなら、さよならでもごめんでもない。https://johnsmith.e-monsite.com/blog/--10.html https://share.evernote.com/note/120b44e4-2c00-0248-f755-c1839689e7d9
https://blog.udn.com/3bebdbf2/181569981
「ありがとう」
近藤はそう言って笑うと、そこで意識を手放した。
慶応4年、4月25日。
この時代を騒がせた新撰組の局長、近藤勇の歴史はここで幕を閉じる。
彼が背負ってきたものはあまりに大きかったが、信頼する仲間がいたから、彼はやっていけた。
こうして誠の男、近藤勇は笑いながら、永遠の眠りについた。
ほどなくして、私達は近藤さんの死を知らされた。
それはあまりに突然すぎて、なんの実感も沸かなかった。
「……近藤さん…最期に…なんて言ったんですか…?」
沖田さんは震える声でそう聞いていた。
「楽しかった、ありがとうって」
「そうですか」
おミツさんがそう答えると、沖田さんは今にも泣きだしそうな顔で、笑っていた。
その笑い顔が印象的だった。
その後、おミツさんはどこかへ行くと言っていたけれど、どこへ行くかは近藤さんの死しか頭にはなくて、覚えていない。
それから実は、土方さんが泣いている所は見ていない。
コンコン…
「土方さん。ここにお食事置いときますよ」
「あぁ」
というより、土方さんをしばらく見ていない。
あれから、療養に入ったのだが、部屋には誰も入れず、籠りっぱなしだ。
多分、誰にも見せずに泣いているのだと思う。
土方さんが気付かれたくないのなら、私達は絶対に気付いていない振りをするし、何も言葉は掛けない。
土方さんには心を整理させる時間が必要だと思う。
それに、何か言葉を掛けたところでそれは気休めにもならない。
言葉とか、そういうのじゃないと思う。
土方さんと近藤さんのことは、自分で前に進んでもらうしかない。
だから私達は土方さんの心に整理がつくまで、いつまでも待てる。
近藤さんは、切腹でなく、斬首だったと聞かされた。
あの人は、『武士』としての誇りを持ち続けていたから、斬首じゃなくてせめて、切腹にさせてあげたかったけど、笑って死んでいったのならそれでも良かったのかもしれない。
それに、最後まで寝返らず、自ら死を選んだ。
最後まで、新撰組としての誇りを捨てなかった。
それだけで十分だ。
近藤さんの首はあれから板橋に3日間晒されると、京都の三条河原に晒されたらしいが、首はいつの間にか姿を消した。
どこに行ったのか、わからない。
私達は、わざと首は見に行かなかった。
近藤さんは、きっとそれを望んでいないから。
そんなことを毎日考えて、月日が流れた。
沖田さんも、少しは立ち直ったように見える。
彼も、夜な夜な抜け出して、物思いにふけっているのを知っているが、それも皆知らないふり。
口には出さずとも、皆近藤さんのことを思っている。
仲間って、そういうもんだと思う。
ガラッ
そんな中、いつもは開かない襖が空いた。
「お前ら。会津へ向かうぞ」
「ひ……土方さん!!」
部屋からのっそりと土方が出てきたのだ。
すっかり足は完治したのか、何事もなかったように立っている。
Posted by beckywong at
01:07
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2025年01月06日
美海は頷いた。
「………はい」
美海は頷いた。
「大丈夫。直ぐに済む。お前らが出る程の幕じゃないさ」
土方は美海と沖田の頭を軽く叩いた。
ほら。最後にはこうして気を使わせないようにする。
やっぱりおかしい。
「死なないでくださいよ。皆さん」
美海はそう呟いた。
「おう。ちょっと行ってくるわ」
土方はまるで散歩にでもでかけるように部屋を出た。
それに市村、隊士が続く。
私達はただ、ただ、その後ろ姿を見ているだけだった。
朝日はまだ登っていなかった。
「……結局、また土方さんの優しさに甘えてしまいましたね」
彼らがいなくなって、美海はそう言った。
「……えぇ」
沖田もぼんやりと答えた。
今回、自分の体調不良のせいだが、土方は多分、自分が体調不良でなくとも何かと理由を着けて行くのを阻止させたと思う。
ただの勘だが、今回ばかりは美海の意見に賛成だった。https://blog.udn.com/29339bfd/181569955 https://classic-blog.udn.com/29339bfd/181573387 https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/26/
土方は何か、自分達を気づかい過ぎている。
「……私はいつも、こういう大事な時に行けない気がする。最後にちゃんと戦ったのは池田屋の記憶ぐらいしかない」
「……私もです」
美海は刀を眺めた。
まだ、沖田にもらった刀は刃こぼれはあれど、生きている。
「ゲホッ!ゴホッ…近藤さんがいない今、私が土方さんを守らなきゃいけないのに…!」
「……沖田さん…」
私は、戦いに行けなかったんじゃない。
いかなかったんだ。
行こうと思えば、行けた。
でも、行かなかった。
やっぱり、どこか怖いから?
あの人達を置いて自分だけ楽するって?
そう思うと、美海は急に背筋がゾッとした。
同時に失望した。
自分は……なんて───。
無力で。愚か。
「………本当情けないです…ケホッ…」
「……そうですね…」
情けない。情けなすぎる。
美海はぐっと唇を噛んだ。
血が滲んだ。
「もう…朝ですね…」
美海は気をまぎらわす様にふと障子に目を移すと隙間から朝日が洩れていた。
「ケホッ…なんか本当すいません」
「なんで謝るんですか。障子、開けますね」
美海は沖田の答えは聞かずに障子を開けた。
新鮮な空気が身体を巡る。
───生きてる。
「あ!黒猫」
沖田が突如そう呟いたので、美海も庭を見てみた。
庭のど真ん中からこちらを見ている。
「ぅわぁ…不吉…」
つい、そう口に出していた。
「黒いだけで不吉だなんて、猫もいい迷惑ですよ」
沖田は困ったように笑った。
黒猫はピョンと縁側を越えて部屋の中へ入ってきた。
沖田の話していることがわかったのかどうなのか、沖田の近くに寄ってきた。
「でも久しぶりに猫なんて見たなぁ。ケホッ…おいで」
沖田が黒猫を触ろうと手を伸ばすと、猫はヒョイと軽やかに避けた。
「む…」
沖田は顔をしかめるともう一度手を伸ばした。
しかし再び避けられる。
何回か猫と沖田の戦闘が続いていよいよ沖田が立ち上がった。
「はぁ…」
美海はため息を着く。
元気だなぁ。
だがそう思った矢先にフラリと沖田は倒れた。
「ちょ!大丈夫ですか!?」
「…えぇ…目眩と頭痛でちょっと立ち眩みが…」
「今日はゆっくりしていてくださいよ」
猫は不思議そうに沖田を見ていた。
「お前はいいね。ゲホッ…自由に動けるんだから」
「沖田さん…」
あー。もう、どうしてなんだろう。
どうして、この人はこんなに苦しむ運命だったんだろう。
私がそうだったら良かったのにね。
しばらく沖田は猫を見ていたが、猫はタタンと縁側を降りるとどこかへ行ってしまった。
「気まぐれなんだから…」
沖田は半ば不貞腐れながら言った。
「猫はそんなもんですよ」
「美海さんも猫っぽい」
美海は驚いたように沖田を見た。
「え~!?それを言うなら沖田さんなんじゃないですか?私はどちらかというと犬な気がする」
「そうかなぁ?」
沖田は首を傾げた。
「「でも鉄くんは確実に犬」」
「ですよね~」
二人は笑った。
「斉藤さんも猫かなー」
「土方さんは絶対狼」
「壬生狼って言われてたぐらいですもんね。私達」
「えぇ…。近藤さんは…」
そう言いかけて沖田は口を止めた。
美海もハッと沖田を見る。
「……近藤さん、どうしてるでしょうか…」
沖田は空を見上げてそう言う。
空は晴れ渡っていた。
「大丈夫…ですよ」
美海は頷いた。
「大丈夫。直ぐに済む。お前らが出る程の幕じゃないさ」
土方は美海と沖田の頭を軽く叩いた。
ほら。最後にはこうして気を使わせないようにする。
やっぱりおかしい。
「死なないでくださいよ。皆さん」
美海はそう呟いた。
「おう。ちょっと行ってくるわ」
土方はまるで散歩にでもでかけるように部屋を出た。
それに市村、隊士が続く。
私達はただ、ただ、その後ろ姿を見ているだけだった。
朝日はまだ登っていなかった。
「……結局、また土方さんの優しさに甘えてしまいましたね」
彼らがいなくなって、美海はそう言った。
「……えぇ」
沖田もぼんやりと答えた。
今回、自分の体調不良のせいだが、土方は多分、自分が体調不良でなくとも何かと理由を着けて行くのを阻止させたと思う。
ただの勘だが、今回ばかりは美海の意見に賛成だった。https://blog.udn.com/29339bfd/181569955 https://classic-blog.udn.com/29339bfd/181573387 https://mathewanderson.blog-mmo.com/Entry/26/
土方は何か、自分達を気づかい過ぎている。
「……私はいつも、こういう大事な時に行けない気がする。最後にちゃんと戦ったのは池田屋の記憶ぐらいしかない」
「……私もです」
美海は刀を眺めた。
まだ、沖田にもらった刀は刃こぼれはあれど、生きている。
「ゲホッ!ゴホッ…近藤さんがいない今、私が土方さんを守らなきゃいけないのに…!」
「……沖田さん…」
私は、戦いに行けなかったんじゃない。
いかなかったんだ。
行こうと思えば、行けた。
でも、行かなかった。
やっぱり、どこか怖いから?
あの人達を置いて自分だけ楽するって?
そう思うと、美海は急に背筋がゾッとした。
同時に失望した。
自分は……なんて───。
無力で。愚か。
「………本当情けないです…ケホッ…」
「……そうですね…」
情けない。情けなすぎる。
美海はぐっと唇を噛んだ。
血が滲んだ。
「もう…朝ですね…」
美海は気をまぎらわす様にふと障子に目を移すと隙間から朝日が洩れていた。
「ケホッ…なんか本当すいません」
「なんで謝るんですか。障子、開けますね」
美海は沖田の答えは聞かずに障子を開けた。
新鮮な空気が身体を巡る。
───生きてる。
「あ!黒猫」
沖田が突如そう呟いたので、美海も庭を見てみた。
庭のど真ん中からこちらを見ている。
「ぅわぁ…不吉…」
つい、そう口に出していた。
「黒いだけで不吉だなんて、猫もいい迷惑ですよ」
沖田は困ったように笑った。
黒猫はピョンと縁側を越えて部屋の中へ入ってきた。
沖田の話していることがわかったのかどうなのか、沖田の近くに寄ってきた。
「でも久しぶりに猫なんて見たなぁ。ケホッ…おいで」
沖田が黒猫を触ろうと手を伸ばすと、猫はヒョイと軽やかに避けた。
「む…」
沖田は顔をしかめるともう一度手を伸ばした。
しかし再び避けられる。
何回か猫と沖田の戦闘が続いていよいよ沖田が立ち上がった。
「はぁ…」
美海はため息を着く。
元気だなぁ。
だがそう思った矢先にフラリと沖田は倒れた。
「ちょ!大丈夫ですか!?」
「…えぇ…目眩と頭痛でちょっと立ち眩みが…」
「今日はゆっくりしていてくださいよ」
猫は不思議そうに沖田を見ていた。
「お前はいいね。ゲホッ…自由に動けるんだから」
「沖田さん…」
あー。もう、どうしてなんだろう。
どうして、この人はこんなに苦しむ運命だったんだろう。
私がそうだったら良かったのにね。
しばらく沖田は猫を見ていたが、猫はタタンと縁側を降りるとどこかへ行ってしまった。
「気まぐれなんだから…」
沖田は半ば不貞腐れながら言った。
「猫はそんなもんですよ」
「美海さんも猫っぽい」
美海は驚いたように沖田を見た。
「え~!?それを言うなら沖田さんなんじゃないですか?私はどちらかというと犬な気がする」
「そうかなぁ?」
沖田は首を傾げた。
「「でも鉄くんは確実に犬」」
「ですよね~」
二人は笑った。
「斉藤さんも猫かなー」
「土方さんは絶対狼」
「壬生狼って言われてたぐらいですもんね。私達」
「えぇ…。近藤さんは…」
そう言いかけて沖田は口を止めた。
美海もハッと沖田を見る。
「……近藤さん、どうしてるでしょうか…」
沖田は空を見上げてそう言う。
空は晴れ渡っていた。
「大丈夫…ですよ」
Posted by beckywong at
23:54
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2025年01月06日
それに江戸城恭順開城派…。
それに江戸城恭順開城派…。
もはや、官軍に従って穏便に事を済ますつもりだ…。
佐川さんが聞いたらキレるぜ。こりゃ。
「そういや佐川さんは?」
「今は会津にいます」
「会津…?」
「えぇ。なんでも奥羽方面の藩の方々と戦の準備をしているらしいですよ」
戦の準備…。
ここにもいた。
現場で叫びながら指揮をしている佐川を想像すると、なんとなく頬が緩んだ。
まだ負けてなんかいない。
「相変わらず血の気がおおいですよね」
松平も相変わらずな佐川を嬉しく思ったのか、ニヤニヤと言った。
「江戸籠城なんて計画したのは何処の誰ですか」
土方も松平も顔を見合せて笑った。
「俺ら新撰組も、会津藩の指揮下に入って一丁やってきましょうかねぇ」
それからでもいいだろう?https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/12/25/184649?_gl=1*uuq6bb*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12880124174.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post508851787/
北に行くのは。
土方は近藤がいなくなってから、久しぶりに笑った。
近藤のために動いていたのは土方だけではない。
美海達も、別行動で幕臣に掛け合っていた。
「おおおお沖田さんやめてください~!」
ガタンと美海が立ち上がった。
見ると沖田が刀を幕臣の喉元に突きつけている。
「どの口が、そんなことを言っているんでしょうねぇ?」
美海の言葉なんか一切頭に入らず、沖田は刀の峰部分で幕臣の喉を撫でた。
ツーっと冷たい感触首筋から流れる。
「ひっ!お前っそんなことしていいとっ」
沖田は冷笑しながら答えた。
「そんなことしたらどうなるんですか?今や幕府なんてないのに」
「くっ……」
沖田や美海が掛け合ったところ、やはり彼らが若いこともあって馬鹿にされたり流される一方だ。
今回、近藤を助ける気がないやら、新撰組を幕府は必要としていなかったやら、余計なことをペラペラと話す幕臣だったため、沖田が堪忍袋を切らした。
今まで溜まりに溜まったものが爆発したのだ。
「もう一度言います。新撰組局長近藤勇を解放させてください」
沖田の菊一文字がギラリと光った。
「……………」
そう言われると幕臣は無言になった。
さっきまで威勢の良かった彼だが、刀に恐れをなして動かない。
美海も無言で待つ。もうここまできたら沖田に任すしかない。
しばらく経っても口を開かなかった。
結局自分の立場がかわいいのだ。
こんなご時世なのに。
何を徳川にすがる必要があるのだ。
沖田は刀を幕臣の首からずらして振り上げた。
「ちょ!流石に殺すのは…」
沖田の目は冷めきっていて、美海の声など聞こえていない。
「ひっ…!」
ブンッ
美海が焦って止めようとすると沖田は刀を小さく素振りして鞘に収めた。
幕臣はガタガタと震えながら涙を流して地面にへたりこんでいた。
「…もういいです。腰抜けヤロウ」
沖田は見下してそう言うと出口の方に足を進めた。
その場は静まり返り、鹿威しの音だけが響いた。
鹿威しが2回ぐらい鳴ったところで沖田は振り返った。
「行きましょう。美海さん」
「はっはい!」
あんな冷たい目、初めてみた…かも…。
美海はパタパタと後を追い、屋敷を出た。
もう今日で5件目だ。
もちろん全て失敗しているがめげない。
朝からこれを始めていて、すでに夕日が落ちつつある。
流石に近藤の生死に関わることなため、沖田の必死さが伝わってくる。
ただ、必死すぎて空回っているところも少々あるのだが…。
斉藤さんや鉄くんはどうだったかな?
彼らは彼らで、掛け合って…いた?
半ば強制的ではあるが、とりあえず掛け合っていたには違いない。
なんとなく歩いていたら日が沈んで今日はここまでにするということとなった。
現在は斉藤と市村と待ち合わせしている小さな寺の境内に向かっている。
「今日も駄目…でしたね…」
沖田がいつもよりワントーン低めの声で呟いた。
「えぇ……」
私達がこうしている間にも、近藤さんはもうこの世を去っていたりしないだろうか…。いや、ないと信じたい。
もはや、官軍に従って穏便に事を済ますつもりだ…。
佐川さんが聞いたらキレるぜ。こりゃ。
「そういや佐川さんは?」
「今は会津にいます」
「会津…?」
「えぇ。なんでも奥羽方面の藩の方々と戦の準備をしているらしいですよ」
戦の準備…。
ここにもいた。
現場で叫びながら指揮をしている佐川を想像すると、なんとなく頬が緩んだ。
まだ負けてなんかいない。
「相変わらず血の気がおおいですよね」
松平も相変わらずな佐川を嬉しく思ったのか、ニヤニヤと言った。
「江戸籠城なんて計画したのは何処の誰ですか」
土方も松平も顔を見合せて笑った。
「俺ら新撰組も、会津藩の指揮下に入って一丁やってきましょうかねぇ」
それからでもいいだろう?https://freelance1.hatenablog.com/entry/2024/12/25/184649?_gl=1*uuq6bb*_gcl_au*LTPe21veLZJBRJPdfAmRozqD1N1yu8xRDZ. https://ameblo.jp/freelance12/entry-12880124174.html https://www.liveinternet.ru/users/freelance12/post508851787/
北に行くのは。
土方は近藤がいなくなってから、久しぶりに笑った。
近藤のために動いていたのは土方だけではない。
美海達も、別行動で幕臣に掛け合っていた。
「おおおお沖田さんやめてください~!」
ガタンと美海が立ち上がった。
見ると沖田が刀を幕臣の喉元に突きつけている。
「どの口が、そんなことを言っているんでしょうねぇ?」
美海の言葉なんか一切頭に入らず、沖田は刀の峰部分で幕臣の喉を撫でた。
ツーっと冷たい感触首筋から流れる。
「ひっ!お前っそんなことしていいとっ」
沖田は冷笑しながら答えた。
「そんなことしたらどうなるんですか?今や幕府なんてないのに」
「くっ……」
沖田や美海が掛け合ったところ、やはり彼らが若いこともあって馬鹿にされたり流される一方だ。
今回、近藤を助ける気がないやら、新撰組を幕府は必要としていなかったやら、余計なことをペラペラと話す幕臣だったため、沖田が堪忍袋を切らした。
今まで溜まりに溜まったものが爆発したのだ。
「もう一度言います。新撰組局長近藤勇を解放させてください」
沖田の菊一文字がギラリと光った。
「……………」
そう言われると幕臣は無言になった。
さっきまで威勢の良かった彼だが、刀に恐れをなして動かない。
美海も無言で待つ。もうここまできたら沖田に任すしかない。
しばらく経っても口を開かなかった。
結局自分の立場がかわいいのだ。
こんなご時世なのに。
何を徳川にすがる必要があるのだ。
沖田は刀を幕臣の首からずらして振り上げた。
「ちょ!流石に殺すのは…」
沖田の目は冷めきっていて、美海の声など聞こえていない。
「ひっ…!」
ブンッ
美海が焦って止めようとすると沖田は刀を小さく素振りして鞘に収めた。
幕臣はガタガタと震えながら涙を流して地面にへたりこんでいた。
「…もういいです。腰抜けヤロウ」
沖田は見下してそう言うと出口の方に足を進めた。
その場は静まり返り、鹿威しの音だけが響いた。
鹿威しが2回ぐらい鳴ったところで沖田は振り返った。
「行きましょう。美海さん」
「はっはい!」
あんな冷たい目、初めてみた…かも…。
美海はパタパタと後を追い、屋敷を出た。
もう今日で5件目だ。
もちろん全て失敗しているがめげない。
朝からこれを始めていて、すでに夕日が落ちつつある。
流石に近藤の生死に関わることなため、沖田の必死さが伝わってくる。
ただ、必死すぎて空回っているところも少々あるのだが…。
斉藤さんや鉄くんはどうだったかな?
彼らは彼らで、掛け合って…いた?
半ば強制的ではあるが、とりあえず掛け合っていたには違いない。
なんとなく歩いていたら日が沈んで今日はここまでにするということとなった。
現在は斉藤と市村と待ち合わせしている小さな寺の境内に向かっている。
「今日も駄目…でしたね…」
沖田がいつもよりワントーン低めの声で呟いた。
「えぇ……」
私達がこうしている間にも、近藤さんはもうこの世を去っていたりしないだろうか…。いや、ないと信じたい。
Posted by beckywong at
02:05
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2024年12月28日
「あぁ。私ならお前を一番に可愛がる
「あぁ。私ならお前を一番に可愛がる。今の新撰組は剣豪の沖田、永倉、斉藤。更には医療の立花、槍の原田。そこばかり使う。だが、私は平助を一番に思っている。どうだ?」
少し心が揺らいだ。
確かに…。
自分でも薄々は気付いていた。
俺はあまりに平凡だ。
実際はそんなことなく、藤堂は強かった。
だが、あんな中にいると一般感覚が麻痺してしまう。
「どうだ?」
伊東先生…。
伊東先生は、俺を必要としてる?
「私と行かないか?」
藤堂は伊東には幼少から世話になった。
試衛館に移ると言っても応援してくれたのは伊東だ。
俺は伊東先生の側にはいなきゃ駄目な気がする。
それに、最近の俺は今まで仲良くしていたはずなのに、美海にも冷たい態度を取ってしまう。
土方さんにも、後から今日は普通に接しようと毎日思うが、ぎこちない態度になる。
俺には時間が必要だと思う。https://share.evernote.com/note/d236fc1b-0922-ade1-b7d0-6dd10c77a1bc https://blog.udn.com/79ce0388/181569968 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/181569978
新撰組と距離を置こう。
伊東先生に着いていこう。
それが俺の出した答えだった。
送別には皆来てくれた。
美海が寂しそうにしているのを見ると少し心が痛んだ。
土方さんや近藤さんを見ると罪悪感が芽生えた。
左ノやしんぱっつぁんを見ると胸が締め付けられた。
それでも俺は出たんだ。
だって別れただけだから。
後は時間がどうにかしてくれる。
斉藤もいたため、二人でなんとかやっていけていた。
だが、ここも。いや、ここは藤堂には住みづらかった。
伊東は藤堂を一番に思っていると言っていたが、移動してみると違った。
確かにいつも伊東の隣に置かれているのだが、あまり目を向けられていない。
国事について時折、同意を求められるだけだ。
つまんない。
藤堂は思った。何の面白味もない機械的な会話しか目の前には広がっていない。
新撰組は、冗談ばっかで楽しかったな。
やっぱり皆がいない生活っていうのは自分が想像していたよりキツかった。
離れてから気づく。
仲間の大切さ。
あの時の俺は何考えてたんだろ。
時間が経つとそう思えてきた。
人間、無い物ねだりだ。
そろそろ潮時かな。
そう思った頃、長州藩邸に泊まることになった。
伊東は長州の話を聞くと、珍しく感動したようだ。
ここから伊東は本格的に倒幕派に傾いた。
「近藤を暗殺する」
酒の席で伊東が言った。
「ゴフッ!」
藤堂は酒を吹き出した。
周りから視線が注がれる。
ガタンッ
「何言ってんですか!?」
藤堂は立ち上がった。
「わかったのだ。長州はこの国のために攘夷活動をしている。それなのに新撰組はどうだ。攘夷を先駆けとしているにも関わらず攘夷志士を殺す。この元凶は近藤だ。近藤を暗殺するしかない」
「そんな無茶苦茶な!」
「無茶苦茶じゃない」
伊東は極めて本気だった。
彼がこんなことを言い出した原因は長州にあったらしい。
「一!なんとか言ってよ!」
確かに、近藤、土方に不満はあったのだが、ここまでされるとなると黙ってはおけない。
「…………」
斉藤は難しい顔をして黙っていた。
「一!」
「伊東先生!暗殺なんて「平助。お前は私に着いてきたんだろう」
藤堂は黙って頷いた。
「じゃあお前は私の言うことだけを聞いておけばいいんだ」
なにそれ…。
「お前は私の駒なのだから」
それから伊東は藤堂の言葉に耳を貸さなかった。
なんだよ…。
俺が馬鹿だった。
近藤さんは…こんな風に思っていなかったのに…。
少し心が揺らいだ。
確かに…。
自分でも薄々は気付いていた。
俺はあまりに平凡だ。
実際はそんなことなく、藤堂は強かった。
だが、あんな中にいると一般感覚が麻痺してしまう。
「どうだ?」
伊東先生…。
伊東先生は、俺を必要としてる?
「私と行かないか?」
藤堂は伊東には幼少から世話になった。
試衛館に移ると言っても応援してくれたのは伊東だ。
俺は伊東先生の側にはいなきゃ駄目な気がする。
それに、最近の俺は今まで仲良くしていたはずなのに、美海にも冷たい態度を取ってしまう。
土方さんにも、後から今日は普通に接しようと毎日思うが、ぎこちない態度になる。
俺には時間が必要だと思う。https://share.evernote.com/note/d236fc1b-0922-ade1-b7d0-6dd10c77a1bc https://blog.udn.com/79ce0388/181569968 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/181569978
新撰組と距離を置こう。
伊東先生に着いていこう。
それが俺の出した答えだった。
送別には皆来てくれた。
美海が寂しそうにしているのを見ると少し心が痛んだ。
土方さんや近藤さんを見ると罪悪感が芽生えた。
左ノやしんぱっつぁんを見ると胸が締め付けられた。
それでも俺は出たんだ。
だって別れただけだから。
後は時間がどうにかしてくれる。
斉藤もいたため、二人でなんとかやっていけていた。
だが、ここも。いや、ここは藤堂には住みづらかった。
伊東は藤堂を一番に思っていると言っていたが、移動してみると違った。
確かにいつも伊東の隣に置かれているのだが、あまり目を向けられていない。
国事について時折、同意を求められるだけだ。
つまんない。
藤堂は思った。何の面白味もない機械的な会話しか目の前には広がっていない。
新撰組は、冗談ばっかで楽しかったな。
やっぱり皆がいない生活っていうのは自分が想像していたよりキツかった。
離れてから気づく。
仲間の大切さ。
あの時の俺は何考えてたんだろ。
時間が経つとそう思えてきた。
人間、無い物ねだりだ。
そろそろ潮時かな。
そう思った頃、長州藩邸に泊まることになった。
伊東は長州の話を聞くと、珍しく感動したようだ。
ここから伊東は本格的に倒幕派に傾いた。
「近藤を暗殺する」
酒の席で伊東が言った。
「ゴフッ!」
藤堂は酒を吹き出した。
周りから視線が注がれる。
ガタンッ
「何言ってんですか!?」
藤堂は立ち上がった。
「わかったのだ。長州はこの国のために攘夷活動をしている。それなのに新撰組はどうだ。攘夷を先駆けとしているにも関わらず攘夷志士を殺す。この元凶は近藤だ。近藤を暗殺するしかない」
「そんな無茶苦茶な!」
「無茶苦茶じゃない」
伊東は極めて本気だった。
彼がこんなことを言い出した原因は長州にあったらしい。
「一!なんとか言ってよ!」
確かに、近藤、土方に不満はあったのだが、ここまでされるとなると黙ってはおけない。
「…………」
斉藤は難しい顔をして黙っていた。
「一!」
「伊東先生!暗殺なんて「平助。お前は私に着いてきたんだろう」
藤堂は黙って頷いた。
「じゃあお前は私の言うことだけを聞いておけばいいんだ」
なにそれ…。
「お前は私の駒なのだから」
それから伊東は藤堂の言葉に耳を貸さなかった。
なんだよ…。
俺が馬鹿だった。
近藤さんは…こんな風に思っていなかったのに…。
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01:00
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2024年11月27日
「終了でーす。お疲れ様でしたぁ」
「終了でーす。お疲れ様でしたぁ」
近藤はカメラマンにお代を渡しに行った。
「はあぁぁぁあ!疲れたぁ!」
藤堂は足がガクガクいっている。
「俺は長いこと笑顔をしたせいで口がぶるぶるする…」
永倉は口を指差して言った。
確かに笑顔のままの口がぶるぶると震えている。
「俺はよう。中腰はよかったんだが…息が…」
原田は酸欠気味だ。
「いやぁ。近藤さん。案外これってしんどかったんですねぇ…」
「そうだよ!やっとわかってくれたか!」
近藤は苦笑いだ。
山南、土方は疲れきっている。
「ぜぇぜぇ…」
沖田は息が荒い。
「なんや。沖田さん。そんぐらいで息持たんのか?」
「持ってます。大丈夫です」
沖田はそう言われるとポーカーフェイスに戻った。https://classic-blog.udn.com/a440edbd/181360191
https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/10/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-119.html
「そうか?俺はまぁ余裕やけどな♪」
山崎は自慢気だ。
監察だからこういうことは慣れているのだろう。
「すごいですね~」
沖田は棒読みで言った。
この間にはしばらく火花が散っていたのは言うまでもない。
「届きましたよ~!」
数日後、集合写真が届いた。
「お!見せろ見せろ!」
バタバタとこの前撮ったメンバーが集まる。
「……あれ?」
永倉が一言言う。
「あははは!しんぱっつぁん超口ひきつってんじゃん!」
「そういう平助こそ!死にそうな顔してるぞ!左ノは…あははははは!吐きそうな顔してる!」
他には土方はいつも通り鬼のような顔、近藤はやっぱり苦しそうで山南は苦笑いだった。
山崎は軽く美海の方を向いてしまっている。
斉藤は無表情で、美海、沖田は仲良く立っていた。
最初で最後であろう自然な新撰組の写真が近藤の部屋に飾られた。
パンパンパンッ
バシィンッ!
「次っ!」
テンポよく竹刀の音が道場に響く。
パンパンパン!
「美海はいったいどうしたんだ?」
「さぁ。なんか誠心を清めるんだって。あれじゃただ肉体的に鍛えてるだけだよな」
道場で隊士を倒しまくっているのは美海だ。その様子を隅で斉藤、永倉が見ている。
パンパンパンパン!
あ゛ー―――!
最近の私はおかしい!
パンッ!
おかしいって!
美海はボーッと打っているのだが相手は淡々と倒されていく。
意を決した隊士が次々入ってくる。
この美海のストレス発散に近い行動に付き合ってやっているのは一番隊隊士だ。迷惑極まりないだろう。
じゃんけんで負けた順に入っている。
あ゛ー――――!本当私どうしたんだろう!
ゴスッ
バキッ
「ヴっ…」
「ばき…?」
物が割れたような音と妙な手応え、うめき声が聞こえて、美海は我に返る。
ふと下を見ると腹を抱えている隊士がいる。
「あーあ」
遠くで永倉が隊士に哀れみの目を向ける。
「わわわわ私!すいません!今すぐ治療します!」
なんと無意識に得意の急所一発刺しをしてしまっていたのだ。
幸い隊士は防具をしていたのだが、竹刀先の形が丸くくっきりついて割れている。
ダメージは軽減されているが直に当たったのだろう。
美海はバタバタと隊士を治療室に連れていった。
ピッ
「よしっ!」
美海は骨が折れていないことを確かめると、とりあえずシップを貼って固定しておいた。
「本当にすいませんでした!私の不注意で!まじですいませんでした!ちょっと考え事をしていて…」
美海はガバッと土下座をする。
「いやいや!いいですよ別に!」
考え事してあんなに強いのかよ…。
隊士にはある意味恐怖心が芽生えた。
「また腫れ上がってきたり、妙な痛みを感じたら来てください!」
「はい」
今既に痛いけどね…。いや、立花さんには言わないけどね…。
隊士は半泣きだ。
美海は隊士が部屋を出ていった後しばらく部屋に残っていた。
私…。何してんだろ…。
皆に迷惑かけてんじゃん!
ガラッ
「美海くん」
「山南さん!!」
部屋に入ってきたのは山南だった。
「今回はどうしたんだい?」
「山南さぁぁぁぁあん!」
美海は山南に泣きついた。
「で。沖田くんとなんかあった?また迷惑かけたとか?」
近藤はカメラマンにお代を渡しに行った。
「はあぁぁぁあ!疲れたぁ!」
藤堂は足がガクガクいっている。
「俺は長いこと笑顔をしたせいで口がぶるぶるする…」
永倉は口を指差して言った。
確かに笑顔のままの口がぶるぶると震えている。
「俺はよう。中腰はよかったんだが…息が…」
原田は酸欠気味だ。
「いやぁ。近藤さん。案外これってしんどかったんですねぇ…」
「そうだよ!やっとわかってくれたか!」
近藤は苦笑いだ。
山南、土方は疲れきっている。
「ぜぇぜぇ…」
沖田は息が荒い。
「なんや。沖田さん。そんぐらいで息持たんのか?」
「持ってます。大丈夫です」
沖田はそう言われるとポーカーフェイスに戻った。https://classic-blog.udn.com/a440edbd/181360191
https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/10/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-119.html
「そうか?俺はまぁ余裕やけどな♪」
山崎は自慢気だ。
監察だからこういうことは慣れているのだろう。
「すごいですね~」
沖田は棒読みで言った。
この間にはしばらく火花が散っていたのは言うまでもない。
「届きましたよ~!」
数日後、集合写真が届いた。
「お!見せろ見せろ!」
バタバタとこの前撮ったメンバーが集まる。
「……あれ?」
永倉が一言言う。
「あははは!しんぱっつぁん超口ひきつってんじゃん!」
「そういう平助こそ!死にそうな顔してるぞ!左ノは…あははははは!吐きそうな顔してる!」
他には土方はいつも通り鬼のような顔、近藤はやっぱり苦しそうで山南は苦笑いだった。
山崎は軽く美海の方を向いてしまっている。
斉藤は無表情で、美海、沖田は仲良く立っていた。
最初で最後であろう自然な新撰組の写真が近藤の部屋に飾られた。
パンパンパンッ
バシィンッ!
「次っ!」
テンポよく竹刀の音が道場に響く。
パンパンパン!
「美海はいったいどうしたんだ?」
「さぁ。なんか誠心を清めるんだって。あれじゃただ肉体的に鍛えてるだけだよな」
道場で隊士を倒しまくっているのは美海だ。その様子を隅で斉藤、永倉が見ている。
パンパンパンパン!
あ゛ー―――!
最近の私はおかしい!
パンッ!
おかしいって!
美海はボーッと打っているのだが相手は淡々と倒されていく。
意を決した隊士が次々入ってくる。
この美海のストレス発散に近い行動に付き合ってやっているのは一番隊隊士だ。迷惑極まりないだろう。
じゃんけんで負けた順に入っている。
あ゛ー――――!本当私どうしたんだろう!
ゴスッ
バキッ
「ヴっ…」
「ばき…?」
物が割れたような音と妙な手応え、うめき声が聞こえて、美海は我に返る。
ふと下を見ると腹を抱えている隊士がいる。
「あーあ」
遠くで永倉が隊士に哀れみの目を向ける。
「わわわわ私!すいません!今すぐ治療します!」
なんと無意識に得意の急所一発刺しをしてしまっていたのだ。
幸い隊士は防具をしていたのだが、竹刀先の形が丸くくっきりついて割れている。
ダメージは軽減されているが直に当たったのだろう。
美海はバタバタと隊士を治療室に連れていった。
ピッ
「よしっ!」
美海は骨が折れていないことを確かめると、とりあえずシップを貼って固定しておいた。
「本当にすいませんでした!私の不注意で!まじですいませんでした!ちょっと考え事をしていて…」
美海はガバッと土下座をする。
「いやいや!いいですよ別に!」
考え事してあんなに強いのかよ…。
隊士にはある意味恐怖心が芽生えた。
「また腫れ上がってきたり、妙な痛みを感じたら来てください!」
「はい」
今既に痛いけどね…。いや、立花さんには言わないけどね…。
隊士は半泣きだ。
美海は隊士が部屋を出ていった後しばらく部屋に残っていた。
私…。何してんだろ…。
皆に迷惑かけてんじゃん!
ガラッ
「美海くん」
「山南さん!!」
部屋に入ってきたのは山南だった。
「今回はどうしたんだい?」
「山南さぁぁぁぁあん!」
美海は山南に泣きついた。
「で。沖田くんとなんかあった?また迷惑かけたとか?」
Posted by beckywong at
18:43
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2024年11月27日
「いいじゃない」「あぁ。そういや歳。なんでも明日佐藤道場に天然
「あぁ。そういや歳。なんでも明日佐藤道場に天然理心流の若先生が出稽古に来るらしい」
「ほぅ」
「相手してもらったらどうだ」
佐藤道場とは土方の姉の嫁ぎ先の佐藤彦五郎が作った小さな出稽古用の道場だ。
土方は佐藤とも仲がよく、後に佐藤自身も新撰組の良き支援者になる。
「んー―。考えとくー。あ。今回もまぁまぁの売れ行きだぜ!」
「そうか」
土方の中々の頑張りに為三郎は嬉しいようだ。
「天然理心流かぁ…」
土方は自分の寝床に着くとポツリと呟いた。
まだ試合してもらったことねぇなぁ。
「いっちょ見に行くかぁ!」
土方はそう言うと眠りに着いた。https://classic-blog.udn.com/29339bfd/181360096 https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-116.html
https://johnsmith786.mystrikingly.com/blog/add-a-blog-post-title-4ab28781-8394-47ec-b76f-a823916cd9f4
次の日。
天気は快晴。
空気も良く、正に試合日和であった。
「兄さん!ちょっと行ってくるわ」
いつも通り、高くで髪を結った土方は、腰に木刀と竹刀を差し、家を出た。
若先生かぁ…!
どんな感じだろう…。
やっぱゴリラみたいな感じかな…。
いやいや。案外ちゃらんぽらんだったり。
ヒゲ生えてんのかなぁ?
土方は脳内でいろんな『若先生』像を作り上げては、一人笑った。
そんなこんなしている内に、気付けば日野の佐藤道場に着いていた。
「彦五郎さーん」
「おーう。って歳かぁ!久しぶりだなぁ!」
佐藤は嬉しそうに笑った。
「道場に天然理心流の若先生が来てるとか…」
「おう!歳は相変わらず情報が早えなぁ!もう来てるよ」
「まじでかぁ!?」
土方は目を輝かして道場へ急いだ。
道場は佐藤の営んでいる宿の一角にポツンとある。
「やぁぁぁあ!」
中からは勇ましい声が聞こえていた。
土方は好奇心で胸を高鳴らせながら道場を覗いた。ん…?
あ…れ…?
どれ?
「ぜぇ…歳…早すぎだ…」
後ろから追ってきた佐藤が息を切らしながら喋る。
「彦五郎さん。若先生ってのは?」
「あぁ。あそこだ」
彦五郎が指す方を見て土方は目を点にする。
「……え?」
俺より年下じゃねぇの?
土方の視線の先に映る『若先生』はかなり若かったのだが、独自の気迫を感じられた。
土方は吸い寄せられる用に近づいていった。
竹刀を持って立っている。休憩だろうか。
土方は若先生の前に立つとその鋭い切れ長の目でガン見した。
「?」
不思議そうな顔をしながらもニコニコと見ている。
土方は下から上まで舐めるように見た。
これが若先生…?ガキじゃねぇか。
ジロジロと土方は見る。
ゴンッ
「ってぇ!」
土方は頭を抑えている。
「馬鹿野郎!若先生に失礼なことしてんじゃねぇ!」
佐藤が土方の頭にゲンコツを落としたのだ。
「この人が彦五郎さんの言っていた『歳』さんですか?」
「あぁ。憎たらしい奴ですが、仲良くしてやってください」
佐藤は苦笑いする。
「けっ!」
土方はそれにも悪態をつく。
だがそんな土方に嫌そうな顔もせず、むしろ嬉しそうな顔で若先生は手を差し出してきた。
「初めまして!島崎 勝太だ!これからよろしくな!」
島崎はニカッと笑う。笑った口が大きく、人懐っこそうだ。
その手を土方は取らずにパシンと叩いた。愛想のないやつだ。
「いい気だなぁ」
島崎は呟いた。
さてさて。この島崎という男。笑うとかなり優しそうなのだが、目も鋭く、口も大きく、中々恐持てだ。
土方とはまた違うが。かなりのイケメンと言うわけでもなく、良くも悪くもない。見方による。何処と無くゴリラに似てないこともない。
「ほぅ」
「相手してもらったらどうだ」
佐藤道場とは土方の姉の嫁ぎ先の佐藤彦五郎が作った小さな出稽古用の道場だ。
土方は佐藤とも仲がよく、後に佐藤自身も新撰組の良き支援者になる。
「んー―。考えとくー。あ。今回もまぁまぁの売れ行きだぜ!」
「そうか」
土方の中々の頑張りに為三郎は嬉しいようだ。
「天然理心流かぁ…」
土方は自分の寝床に着くとポツリと呟いた。
まだ試合してもらったことねぇなぁ。
「いっちょ見に行くかぁ!」
土方はそう言うと眠りに着いた。https://classic-blog.udn.com/29339bfd/181360096 https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-116.html
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次の日。
天気は快晴。
空気も良く、正に試合日和であった。
「兄さん!ちょっと行ってくるわ」
いつも通り、高くで髪を結った土方は、腰に木刀と竹刀を差し、家を出た。
若先生かぁ…!
どんな感じだろう…。
やっぱゴリラみたいな感じかな…。
いやいや。案外ちゃらんぽらんだったり。
ヒゲ生えてんのかなぁ?
土方は脳内でいろんな『若先生』像を作り上げては、一人笑った。
そんなこんなしている内に、気付けば日野の佐藤道場に着いていた。
「彦五郎さーん」
「おーう。って歳かぁ!久しぶりだなぁ!」
佐藤は嬉しそうに笑った。
「道場に天然理心流の若先生が来てるとか…」
「おう!歳は相変わらず情報が早えなぁ!もう来てるよ」
「まじでかぁ!?」
土方は目を輝かして道場へ急いだ。
道場は佐藤の営んでいる宿の一角にポツンとある。
「やぁぁぁあ!」
中からは勇ましい声が聞こえていた。
土方は好奇心で胸を高鳴らせながら道場を覗いた。ん…?
あ…れ…?
どれ?
「ぜぇ…歳…早すぎだ…」
後ろから追ってきた佐藤が息を切らしながら喋る。
「彦五郎さん。若先生ってのは?」
「あぁ。あそこだ」
彦五郎が指す方を見て土方は目を点にする。
「……え?」
俺より年下じゃねぇの?
土方の視線の先に映る『若先生』はかなり若かったのだが、独自の気迫を感じられた。
土方は吸い寄せられる用に近づいていった。
竹刀を持って立っている。休憩だろうか。
土方は若先生の前に立つとその鋭い切れ長の目でガン見した。
「?」
不思議そうな顔をしながらもニコニコと見ている。
土方は下から上まで舐めるように見た。
これが若先生…?ガキじゃねぇか。
ジロジロと土方は見る。
ゴンッ
「ってぇ!」
土方は頭を抑えている。
「馬鹿野郎!若先生に失礼なことしてんじゃねぇ!」
佐藤が土方の頭にゲンコツを落としたのだ。
「この人が彦五郎さんの言っていた『歳』さんですか?」
「あぁ。憎たらしい奴ですが、仲良くしてやってください」
佐藤は苦笑いする。
「けっ!」
土方はそれにも悪態をつく。
だがそんな土方に嫌そうな顔もせず、むしろ嬉しそうな顔で若先生は手を差し出してきた。
「初めまして!島崎 勝太だ!これからよろしくな!」
島崎はニカッと笑う。笑った口が大きく、人懐っこそうだ。
その手を土方は取らずにパシンと叩いた。愛想のないやつだ。
「いい気だなぁ」
島崎は呟いた。
さてさて。この島崎という男。笑うとかなり優しそうなのだが、目も鋭く、口も大きく、中々恐持てだ。
土方とはまた違うが。かなりのイケメンと言うわけでもなく、良くも悪くもない。見方による。何処と無くゴリラに似てないこともない。
Posted by beckywong at
17:24
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2024年11月24日
沖田と美海は年も近く、仲が良いため誰も
沖田と美海は年も近く、仲が良いため誰も不審におもわない。
「ふぅー。おいしかったぁ…。で!なんですか?見せたいものって!」
美海と沖田は夕食が終わり、隊務もないため自室に戻っていた。
「実は……」
ガサガサと後ろに手をやる。
「ジャー――ン!」
「ぅおっ!沖田さん…それはまさか…」
美海と沖田は目を合わせ、頷く。
「「豊玉発句集!」」
「わぁ!凄い!よく取ってこれましたね!」
「えぇ。隠し場所が変わっていて少々手間取りましたが」
沖田は額を拭うふりをする。
「久々ですね…」
「早速見ましょう!」
「「行く年の 月日の流れ 蚊帳の外」」
沖田と美海はやはり声を合わせ、音読する。
「お!増えてる増えてる!次は…」
「「春の草 五色までは おぼえけり…」」
「五色までかよ!」
美海は思わず突っ込みを入れた。
「相変わらず面白いですねぇ」
「お笑いでも目指してるんでしょうか」 https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/9/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-118.html https://carina.simplesite.com/
「「北の水 山の南や 春の月」」
「どういうことですか?これはいまいちわからない…」
美海は頭に「?」を浮かべている。
「んー…。たぶん山の南は山南さんで…春の月は土方さんが好きな言葉だから、山南さん好きみたいな感じですかね?」
ほらこことかこことか。
と沖田は春の月という言葉が使われた詞を指差す。
「確かによく使われてますよねぇ…」
ガラッ
突然障子が開いた。
「やーっぱりな…。またお前らかぁ…!」
「ぅわ!土方さん!」
「やはり来ましたか!」
土方が襖を塞いで立っている。額には青筋を浮かべ、顔はヒクヒクとひきつっている。
「早く…それをぉ…渡せぇ………!」
土方は目をギラつかせて、ジリジリと迫る。
「おおおお沖田さん!やはり来ましたかって言うなら何か策が!?」
「ないです」
「ぅそぉ!?」
「周りをもっと警戒するべきでしたね」
ボソボソ…
なにやら廊下から声が聞こえる。
「!」
沖田は何かを聞き取ったようで目を見開いた。
「斎藤さん!ここに間者が!うっかり近くに刀がありませんでした!間者はこっちを向いているので早く打ってください!」
沖田は突如叫び出した。
「総司…?何言ってんだ?」
土方は何がなんだかわからないといった顔をしている。
「なに!?」
パシィィィィン!
「ってぇ!」
胴着を来て竹刀を持った男がいきなり部屋に入って土方を打ったのだ。
「土方さん?すまない……」
この男は斎藤 一。
新撰組三番隊隊長。
無表情でよく読めないが剣の腕が沖田と並ぶほどいい。
ちなみに沖田、永倉、斎藤が新撰組でトップの剣士だ。それぞれ違った強さがあり、未だ誰が一番なのかはわからない。この三人は撃剣師範も務めている。
「斎藤くん…また強くなったな…」
「あ。ありがとうございます」
「くたばりませんでしたかぁ…」
「さぁ美海。総司。来てもらおうか」
土方はニヤリと笑う。
形勢逆転だ。
ガシッ
ズルズルズルズル
「ぃやぁぁぁぁあ!」
美海と沖田は土方に引きずられていった。
ガサガサガサ…
「はぁ…全く…。一々すぐ取り上げるんですから…」
今回は説教が長かった上、近藤の部屋の掃除をさせられている。
「ほんっとですよ…」
沖田は頭を擦っている。
よく見れば美海と沖田の頭には大きなたんこぶができている。
土方にゲンコツをくらわせられたのだ。
毎回捕まるというリスクがあるのに同じことを繰り返すのは何故だろう。
「まぁまぁ総司。美海くん」
苦笑いの近藤が宥める。
グシャッ
「今度は何をしてやりましょうか…」
美海が手元の書類を握りしめ、黒い笑みを浮かべる。
「土方さんが男色だって噂でも流してやりましょうか…」
沖田も妖しく笑う。
「は…はははは…」
近藤は絶対に沖田と美海は敵に回してはいけないなと思った。
「「ふふ…ふはははははは!」」
ゾクッ
「?」
土方はただならぬ悪寒を感じ、身震いした。
人斬り集団と呼ばれている、彼ら新撰組の毎日はこんな感じである。
「ふぅー。おいしかったぁ…。で!なんですか?見せたいものって!」
美海と沖田は夕食が終わり、隊務もないため自室に戻っていた。
「実は……」
ガサガサと後ろに手をやる。
「ジャー――ン!」
「ぅおっ!沖田さん…それはまさか…」
美海と沖田は目を合わせ、頷く。
「「豊玉発句集!」」
「わぁ!凄い!よく取ってこれましたね!」
「えぇ。隠し場所が変わっていて少々手間取りましたが」
沖田は額を拭うふりをする。
「久々ですね…」
「早速見ましょう!」
「「行く年の 月日の流れ 蚊帳の外」」
沖田と美海はやはり声を合わせ、音読する。
「お!増えてる増えてる!次は…」
「「春の草 五色までは おぼえけり…」」
「五色までかよ!」
美海は思わず突っ込みを入れた。
「相変わらず面白いですねぇ」
「お笑いでも目指してるんでしょうか」 https://carinaa.blog.shinobi.jp/Entry/9/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-118.html https://carina.simplesite.com/
「「北の水 山の南や 春の月」」
「どういうことですか?これはいまいちわからない…」
美海は頭に「?」を浮かべている。
「んー…。たぶん山の南は山南さんで…春の月は土方さんが好きな言葉だから、山南さん好きみたいな感じですかね?」
ほらこことかこことか。
と沖田は春の月という言葉が使われた詞を指差す。
「確かによく使われてますよねぇ…」
ガラッ
突然障子が開いた。
「やーっぱりな…。またお前らかぁ…!」
「ぅわ!土方さん!」
「やはり来ましたか!」
土方が襖を塞いで立っている。額には青筋を浮かべ、顔はヒクヒクとひきつっている。
「早く…それをぉ…渡せぇ………!」
土方は目をギラつかせて、ジリジリと迫る。
「おおおお沖田さん!やはり来ましたかって言うなら何か策が!?」
「ないです」
「ぅそぉ!?」
「周りをもっと警戒するべきでしたね」
ボソボソ…
なにやら廊下から声が聞こえる。
「!」
沖田は何かを聞き取ったようで目を見開いた。
「斎藤さん!ここに間者が!うっかり近くに刀がありませんでした!間者はこっちを向いているので早く打ってください!」
沖田は突如叫び出した。
「総司…?何言ってんだ?」
土方は何がなんだかわからないといった顔をしている。
「なに!?」
パシィィィィン!
「ってぇ!」
胴着を来て竹刀を持った男がいきなり部屋に入って土方を打ったのだ。
「土方さん?すまない……」
この男は斎藤 一。
新撰組三番隊隊長。
無表情でよく読めないが剣の腕が沖田と並ぶほどいい。
ちなみに沖田、永倉、斎藤が新撰組でトップの剣士だ。それぞれ違った強さがあり、未だ誰が一番なのかはわからない。この三人は撃剣師範も務めている。
「斎藤くん…また強くなったな…」
「あ。ありがとうございます」
「くたばりませんでしたかぁ…」
「さぁ美海。総司。来てもらおうか」
土方はニヤリと笑う。
形勢逆転だ。
ガシッ
ズルズルズルズル
「ぃやぁぁぁぁあ!」
美海と沖田は土方に引きずられていった。
ガサガサガサ…
「はぁ…全く…。一々すぐ取り上げるんですから…」
今回は説教が長かった上、近藤の部屋の掃除をさせられている。
「ほんっとですよ…」
沖田は頭を擦っている。
よく見れば美海と沖田の頭には大きなたんこぶができている。
土方にゲンコツをくらわせられたのだ。
毎回捕まるというリスクがあるのに同じことを繰り返すのは何故だろう。
「まぁまぁ総司。美海くん」
苦笑いの近藤が宥める。
グシャッ
「今度は何をしてやりましょうか…」
美海が手元の書類を握りしめ、黒い笑みを浮かべる。
「土方さんが男色だって噂でも流してやりましょうか…」
沖田も妖しく笑う。
「は…はははは…」
近藤は絶対に沖田と美海は敵に回してはいけないなと思った。
「「ふふ…ふはははははは!」」
ゾクッ
「?」
土方はただならぬ悪寒を感じ、身震いした。
人斬り集団と呼ばれている、彼ら新撰組の毎日はこんな感じである。
Posted by beckywong at
00:59
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2024年11月20日
わずかばかりの星明かりの下、姫を挟ん
わずかばかりの星明かりの下、姫を挟んで櫓に立った。
砦があるであろう方向に目を凝らす。
雲が流れ、月が姿を現すと、五、六町(※約600m)ほど先にそれらしいものの一部が浮かび上がった。
月明かりが刻々と、その全貌を明らかにしていく。
真ん中に立った姫が、目を見張った。
「これは……」
義久は言葉を失った。
それは想像を絶する光景だった。
その砦は、谷の底から谷の向こう岸までのすべてを覆っていた。
これほどの物を、たった一日で組み上げたというのか。
馬の数を見ても門番をしていた男たちの自慢げな話を聞いても、まだ心のどこかで峠道を塞ぐには大仰な櫓付の柵を作ったのだろうと思っていた。楽観していた。
このあたりに砦を立ち上げる場所などなかったからだ。
谷底から砦の天辺までの高さは、ゆうに二十四丈(※約70m)はあるだろう。https://freelancer.anime-voice.com/Entry/87/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-114.html https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2024/11/post-77ef35.html
そのうち峠道の上から天辺までが六丈(※約18m)。幅は三十間(※約55m)というところか。
造りは比べようもないが、都にある最も高い建築物と言われる五重塔よりも高いのではないか。
まさに、そびえ立つ壁だ。
度肝を抜く大きさにも驚かされるが、問題はそれだけではない。
その大きさに見合うだけの兵を配置しているであろうことだ。この砦は、隆家様の挙兵に備えると同時に、落ち延びようとする者を食い止める盾なのだ。
――身震いが襲ってきた。
これほどの砦を突破することなどできるのだろうか。
イダテンが声をかけてきたが、一度では聴き取れなかった。
それほど動揺していた。
「この先に、開けた場所があろう」
繰り返してくれなければ、姫の前で、間抜け面をさらしていたところだ。
確かに、たった一箇所だけそのような場所がある。
ただし、この先というほど近くはない。
イダテンにとっては、この先かもしれないが、人の足であれば四半刻はかかるだろう。
祠に祀ってあった地蔵菩薩は別の場所に移され、今は誰も訪れなくなっている。
手前には木々が生い茂った藪。奥は草地と岩場で大きな洞窟もあった。
夏になるとひんやりと涼しい。
この館に来たときは、そこまで足を伸ばし、洞窟内の湧き水で瓜を冷やして食べたものだ。
寝転ぶと、天井近くで、うっすらと光るコケが星のように見えた。
姫に話したら、連れて行けと、せがまれたものだ。
叶えてさしあげたかったが、できようはずもない。
答えを渋っていると姫の目に涙が浮かんだ。
思わず、機会を見つけお連れします、と口にした――その約定は違えたままだ。
*
義久の目を見て続けた。
「そこに材木が積み上げてあった……多祁理宮の拝殿が新しくなると聞いていた」
その材木が、この砦に変わったのだ。
それを聞いたとたん義久が表情を取り戻した。
「いつ気がついた?」
拝殿に使うような部材ではなかった。
姫の尽力で見ることができた書物がそれを裏付けた。
「三日前に、三郎の……おまえのおじじの忠信から、国親が謀反を起こすだろうと聞いた。ことが起これば、馬木の隆家に助けを求めよとも」
義久が、うなずいた。
「半月ほど前、この道で国親と兼親に襲われた」
この峡谷の先にあるのは、馬木だ。
国親が支配する海田ではない。
老臣の言葉で、ようやく見当がついた。
隆家に備え、あの場所に砦を築くのだろうと。
だが、あれほどの量だ。
すべてを使うとは思わなかった。
ましてや一朝一夕で組み上げるとは思いもしなかった。
老臣には、邸を離れるときに土産代わりに教えてやればよいと安易に考えていた。
つまらぬ細工に時などかけず、すぐに火をかけるべきだったのだ。
――ならば、運命は変わっていたかもしれない。
砦があるであろう方向に目を凝らす。
雲が流れ、月が姿を現すと、五、六町(※約600m)ほど先にそれらしいものの一部が浮かび上がった。
月明かりが刻々と、その全貌を明らかにしていく。
真ん中に立った姫が、目を見張った。
「これは……」
義久は言葉を失った。
それは想像を絶する光景だった。
その砦は、谷の底から谷の向こう岸までのすべてを覆っていた。
これほどの物を、たった一日で組み上げたというのか。
馬の数を見ても門番をしていた男たちの自慢げな話を聞いても、まだ心のどこかで峠道を塞ぐには大仰な櫓付の柵を作ったのだろうと思っていた。楽観していた。
このあたりに砦を立ち上げる場所などなかったからだ。
谷底から砦の天辺までの高さは、ゆうに二十四丈(※約70m)はあるだろう。https://freelancer.anime-voice.com/Entry/87/ https://ypxo2dzizobm.blog.fc2.com/blog-entry-114.html https://william-l.cocolog-nifty.com/blog/2024/11/post-77ef35.html
そのうち峠道の上から天辺までが六丈(※約18m)。幅は三十間(※約55m)というところか。
造りは比べようもないが、都にある最も高い建築物と言われる五重塔よりも高いのではないか。
まさに、そびえ立つ壁だ。
度肝を抜く大きさにも驚かされるが、問題はそれだけではない。
その大きさに見合うだけの兵を配置しているであろうことだ。この砦は、隆家様の挙兵に備えると同時に、落ち延びようとする者を食い止める盾なのだ。
――身震いが襲ってきた。
これほどの砦を突破することなどできるのだろうか。
イダテンが声をかけてきたが、一度では聴き取れなかった。
それほど動揺していた。
「この先に、開けた場所があろう」
繰り返してくれなければ、姫の前で、間抜け面をさらしていたところだ。
確かに、たった一箇所だけそのような場所がある。
ただし、この先というほど近くはない。
イダテンにとっては、この先かもしれないが、人の足であれば四半刻はかかるだろう。
祠に祀ってあった地蔵菩薩は別の場所に移され、今は誰も訪れなくなっている。
手前には木々が生い茂った藪。奥は草地と岩場で大きな洞窟もあった。
夏になるとひんやりと涼しい。
この館に来たときは、そこまで足を伸ばし、洞窟内の湧き水で瓜を冷やして食べたものだ。
寝転ぶと、天井近くで、うっすらと光るコケが星のように見えた。
姫に話したら、連れて行けと、せがまれたものだ。
叶えてさしあげたかったが、できようはずもない。
答えを渋っていると姫の目に涙が浮かんだ。
思わず、機会を見つけお連れします、と口にした――その約定は違えたままだ。
*
義久の目を見て続けた。
「そこに材木が積み上げてあった……多祁理宮の拝殿が新しくなると聞いていた」
その材木が、この砦に変わったのだ。
それを聞いたとたん義久が表情を取り戻した。
「いつ気がついた?」
拝殿に使うような部材ではなかった。
姫の尽力で見ることができた書物がそれを裏付けた。
「三日前に、三郎の……おまえのおじじの忠信から、国親が謀反を起こすだろうと聞いた。ことが起これば、馬木の隆家に助けを求めよとも」
義久が、うなずいた。
「半月ほど前、この道で国親と兼親に襲われた」
この峡谷の先にあるのは、馬木だ。
国親が支配する海田ではない。
老臣の言葉で、ようやく見当がついた。
隆家に備え、あの場所に砦を築くのだろうと。
だが、あれほどの量だ。
すべてを使うとは思わなかった。
ましてや一朝一夕で組み上げるとは思いもしなかった。
老臣には、邸を離れるときに土産代わりに教えてやればよいと安易に考えていた。
つまらぬ細工に時などかけず、すぐに火をかけるべきだったのだ。
――ならば、運命は変わっていたかもしれない。
Posted by beckywong at
22:26
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