2024年03月03日
着物から吉田の匂いがしてその安心
着物から吉田の匂いがしてその安心感からまた涙が溢れた。
用意されていたそれを着て着流し姿で風呂場を出れば吉田が待っていてくれた。
「おいで。」
差し伸べられた手を握ると吉田の腕の中に引き込まれた。
「こんなに震えて……。今日はずっと傍に居るから。」
三津の足をすくい上げて抱きかかえ,自分の部屋に連れて行った。
三津は吉田の首に腕を巻きつけ必死にしがみついた。
『もっとちゃんと見といてやれば良かった……。気を配ってやれば良かった……。
彼奴がまだこの辺りに居るのならこの私が斬り殺してくれる!』
乃美は自責の念に駆られながら急いで旅籠に戻った。
「桂っ!早急に藩邸に戻れ!
宮部,悪いが今日はお開きだ。急用だ。」 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180359408 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180361454 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/71/
乃美の殺気に只事ではないと察知する。
「宮部さん申し訳ない失礼します。」
「構わんよっぽどの事やろ?早よ行け。」
桂と乃美は深く頭を下げて部屋を後にして階段を駆け下りる。
「三津に何か……。」
「土方に……犯された。」
それを聞いた瞬間弾かれたように走り出した。
『犯された?そんな事あってたまるか。そんな都合良く土方は近くに居たのか?
……あぁ,密偵か。アイツの密偵が嗅ぎ付けたのか……。
分かっていたのに……。近くまで手が伸びて来てるのを知っていたのに……。
どうして一人にしてしまった……。三津……。』
一緒に帰ってくれますかと言われた時,席を外して送り届ければ良かった。
困らせてごめんなさいと笑った三津の顔が頭を過る。
「三津はっ!?」
全速力で藩邸に戻り廊下に居た久坂と入江を捕まえた。
「稔麿の部屋に……。」
影を落とした久坂の表情に受け入れたくないそれが事実だと思い知る。吉田の部屋へ行こうと踏み出すがそれを二人に止められた。
「今ようやく落ち着いたところです。心配なのは分かりますが今は稔麿に任せて下さい。」
久坂に宥められるが引き下がりたくない。
「顔だけでも見させて欲しい……。」
今すぐしてやれる事なんてない。自分が顔を見たいと言う欲求を満たすだけなのも承知の上。
ただ会わずに朝を待つなんて出来ない。
「いいよ玄瑞。眠りに落ちた。」
吉田の声に桂は静かに障子を開いた。
そこには胡座を掻いた吉田とその上に座り吉田の胸にしがみついている三津。
「……三津は何があったか話したか?」
「土方に汚されたと。
私は汚いから桂さんに合わせる顔がないと繰り返して,ずっと泣いてました。」
「合わせる顔がないのは私の方だ……。一人にしてしまった……。止められなかった……。危ないと分かっていながら……。」
膝から崩れ落ち袴を強く握り締め項垂れるしかなかった。
「泣き言なら止めてください。それなら俺だって今日無理にでもついて行けば良かった。
宮部さんに三津の話などしなきゃ良かった。
でも結果こうなった事は変えられない。
今は……少しでも三津の傷を癒やしてやらないと……。」
濡れた三津の髪を撫でて指に絡ませた。
「すまない稔麿……。今夜は三津を頼む……。」
桂は力なく立ち上がると三津を起こさないように静かに部屋を出た。
「三津,お前は汚くないよ。お前は綺麗だ。身も心も……綺麗だ。」
少しでも三津の心が救われるように。優しく
囁いて背中を撫でた。
桂は久坂と入江と共に乃美の部屋で三津が逃げて来た時の様子を聞いた。
「物陰から泣いて飛び出して来た時の姿を見てゾッとした……。
近くに奴がまだ居たのなら斬り殺してやったのに。
三津さんが外の空気を吸いに行くと言った時ついて出れば良かった……。今そう言ってももう遅いが……。」
「どこか怪我は無いか診たかったんですが触れられるのを極端に恐れ今は稔麿しか触れられない状態です。
明日また様子を見て診させてもらいますけど。」
『稔麿しか触れられないか……。』
自分には触れさせてくれるだろうか。
後を追わず一人にしてしまった事を恨み拒絶されてしまうんじゃないか。
それが怖くて堪らなかった。
用意されていたそれを着て着流し姿で風呂場を出れば吉田が待っていてくれた。
「おいで。」
差し伸べられた手を握ると吉田の腕の中に引き込まれた。
「こんなに震えて……。今日はずっと傍に居るから。」
三津の足をすくい上げて抱きかかえ,自分の部屋に連れて行った。
三津は吉田の首に腕を巻きつけ必死にしがみついた。
『もっとちゃんと見といてやれば良かった……。気を配ってやれば良かった……。
彼奴がまだこの辺りに居るのならこの私が斬り殺してくれる!』
乃美は自責の念に駆られながら急いで旅籠に戻った。
「桂っ!早急に藩邸に戻れ!
宮部,悪いが今日はお開きだ。急用だ。」 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180359408 https://classic-blog.udn.com/79ce0388/180361454 https://freelancer.anime-voice.com/Entry/71/
乃美の殺気に只事ではないと察知する。
「宮部さん申し訳ない失礼します。」
「構わんよっぽどの事やろ?早よ行け。」
桂と乃美は深く頭を下げて部屋を後にして階段を駆け下りる。
「三津に何か……。」
「土方に……犯された。」
それを聞いた瞬間弾かれたように走り出した。
『犯された?そんな事あってたまるか。そんな都合良く土方は近くに居たのか?
……あぁ,密偵か。アイツの密偵が嗅ぎ付けたのか……。
分かっていたのに……。近くまで手が伸びて来てるのを知っていたのに……。
どうして一人にしてしまった……。三津……。』
一緒に帰ってくれますかと言われた時,席を外して送り届ければ良かった。
困らせてごめんなさいと笑った三津の顔が頭を過る。
「三津はっ!?」
全速力で藩邸に戻り廊下に居た久坂と入江を捕まえた。
「稔麿の部屋に……。」
影を落とした久坂の表情に受け入れたくないそれが事実だと思い知る。吉田の部屋へ行こうと踏み出すがそれを二人に止められた。
「今ようやく落ち着いたところです。心配なのは分かりますが今は稔麿に任せて下さい。」
久坂に宥められるが引き下がりたくない。
「顔だけでも見させて欲しい……。」
今すぐしてやれる事なんてない。自分が顔を見たいと言う欲求を満たすだけなのも承知の上。
ただ会わずに朝を待つなんて出来ない。
「いいよ玄瑞。眠りに落ちた。」
吉田の声に桂は静かに障子を開いた。
そこには胡座を掻いた吉田とその上に座り吉田の胸にしがみついている三津。
「……三津は何があったか話したか?」
「土方に汚されたと。
私は汚いから桂さんに合わせる顔がないと繰り返して,ずっと泣いてました。」
「合わせる顔がないのは私の方だ……。一人にしてしまった……。止められなかった……。危ないと分かっていながら……。」
膝から崩れ落ち袴を強く握り締め項垂れるしかなかった。
「泣き言なら止めてください。それなら俺だって今日無理にでもついて行けば良かった。
宮部さんに三津の話などしなきゃ良かった。
でも結果こうなった事は変えられない。
今は……少しでも三津の傷を癒やしてやらないと……。」
濡れた三津の髪を撫でて指に絡ませた。
「すまない稔麿……。今夜は三津を頼む……。」
桂は力なく立ち上がると三津を起こさないように静かに部屋を出た。
「三津,お前は汚くないよ。お前は綺麗だ。身も心も……綺麗だ。」
少しでも三津の心が救われるように。優しく
囁いて背中を撫でた。
桂は久坂と入江と共に乃美の部屋で三津が逃げて来た時の様子を聞いた。
「物陰から泣いて飛び出して来た時の姿を見てゾッとした……。
近くに奴がまだ居たのなら斬り殺してやったのに。
三津さんが外の空気を吸いに行くと言った時ついて出れば良かった……。今そう言ってももう遅いが……。」
「どこか怪我は無いか診たかったんですが触れられるのを極端に恐れ今は稔麿しか触れられない状態です。
明日また様子を見て診させてもらいますけど。」
『稔麿しか触れられないか……。』
自分には触れさせてくれるだろうか。
後を追わず一人にしてしまった事を恨み拒絶されてしまうんじゃないか。
それが怖くて堪らなかった。
Posted by beckywong at
18:35
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