2018年08月13日

その声に顔をあげると、紹鴎は相変わらず柔らかな微笑

その声に顔をあげると、紹鴎は相変わらず柔らかな微笑みを湛えていた。則正は、その様子に少し安心すると、「いえ、何でもございません。」と返した。「ところで、則正はん。今日は、ええ、ええ茶器を持ってきてくれはったとうかごうたのですが、そちらですかな?」紹鴎が木箱を見ている。則正は、脇に置いてあった木箱を、恭しく目の前に出すと、「さようです。どうぞお確かめ下さい。」と言って、木箱から器を取り出した。「ほぅ。設楽焼ですかいな。これまた見事な一品ですなぁ。触ってみてもよろしゅうございますやろか?」「もちろんでございます。」則正が言うと、紹鴎は器を手にとり、ほぅ、なかなか、などと言っている。その様子を見た則正は、「日の本で、このような見事な焼き物は、設楽と備前くらいじゃろうと主人が申しておりました。」紹鴎が、その言葉に満面の笑みを浮かべだした。茶の湯で使う器を高価な唐物(中国)の茶器から、国内の茶器でも行えるようにして、貴族の贅沢を民間の贅沢にしているのが、紹鴎である。その際、紹鴎は設楽と備前の茶器を広めている。「ご主人とは、何やら気が合いそうですなぁ。」再び、ころころと笑い始めた。



Posted by beckywong at 13:15│Comments(0)
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